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リフォーム会社に学ぶプロのお仕事

はじめに

このブログを書いた動機

うちの嫁さんは趣味でパンを焼くのが大好きです。
研究熱心で向上心が強いので、最近ではプロ並み、いや、プロ以上においしいパンを焼きます。
なんでプロ以上なんだっていうと、大量生産せずに一つ一つのパンにめちゃくちゃ時間がかけられるからです。
知り合いや近所の人にも大好評なので、とうとう「パン屋を開いてみたい」という気持ちがわいてきました。


そんなわけで、今はパン屋の設計をしてくれる会社を色々と探しています。
まだ調査は始まったばかりなのですが、ものすごく対照的な会社が二つ現れました。
この話はおいらたちのようなITエンジニアが初めて顧客と接するときにも大事な話だと思ったので、ちょっとメモしておきます。

おいらたちの状態や要求事項

えっと、嫁さんはパンを焼くのは上手ですが、それ以外の知識はほぼゼロです。
なので、「パン屋を開いてみたい!」と思っても、何をどうしていいのか全く分かりません。
一応、パン屋開業に関する本を読んでそれなりに勉強はしていますが、さすがに具体的で細かいことはまだよく分かっていません。
だから、「建物のとしてのパン屋」についての知識もほとんどなしです。
どうすればお客さんにアピールできるのかとか、どういうレイアウトが機能的なのかとか、そういった知識もほとんどありません。
だから、営業や建築士の人にはどんどん提案をしてもらいたいと考えています。


さらに、お金もほとんどありません。
最近思いついたばかりなので、「開業に向けてコツコツと貯めてきた貯金」なんてものもありません。
だから、できる限り安く作ってほしいと考えています。
ただし、相場が分かっていないので具体的な額すらイメージできません。
とりあえず、「えいやー」で考えた予算は500万円です。
色々と開業に向けた調査をして必要な額がつかめてから、資金の具体的な調達方法を検討する予定です。


あと、嫁さんは主婦業と兼業でパン屋を経営しなければならないので、自宅から離れられません。
よって、自宅の敷地内に建物を作る必要があります。
また、パン屋で大儲けしようと考えているわけではないので、必要最小限の厨房と売り場を確保できればいいと考えています。


ただし、小さくて安い建物であってもオシャレにはしておきたいと考えています。
特に嫁さんは見た目へのこだわりが強いので、一見して魅力のない建物はNGです。


・・・とまあ、おいらたちの状況や要求事項はこんな感じです。

デキない営業さん

パン屋の設計ってどこに頼んだらいいの??という状態なので、とりあえず今住んでいる家のハウスメーカーにリフォームの相談をしてみました。
数日後、営業さんと施工担当の工務店さんの二人が家にやってきました。
今住んでいる家自体は非常に気に入っているのですが、今回の相談に関しては失敗でした。。。
「頼んだ相手が良くなかった」というのもあると思いますが、それ以上に「それって顧客と話をする上でどうよ?」とツッコミたくなるような要素が満載でした。
以下にその人たちの印象や仕事ぶりをリストアップしてみます。

  • まず、見た目がダサい。二人ともくたびれた中年風です。おいらも嫁さんも第一印象からして、「期待できなさそう」という印象を持ってしまいました。
  • おいらたちの要求を聞くのもそこそこに、まず予算や資金面の話から入り始めました。もちろん、お金の話も重要ですし、予算が分からないとプランが立てにくいという彼らの言い分も分かります。しかし、前述の通り、お金についてはまだこれからと考えている今のおいらたちにとってはあまり楽しくない話題です。それが最初の間ずっと続きました。
  • おいらたちと同様、営業さんも工務店さんもパン屋の設計については全く未経験だったようです。普通のハウスメーカーなので、確かにそれは仕方ないと思うのですが、全く具体的な提案が出てきません。何かにつけて「どうしたいですか?どうすればいいですか?」と我々からパン屋の仕様を引き出そうとするばかりです。挙句の果てには「イメージに近いパン屋さんの写真を撮ってきてください。それを見て、我々もイメージを膨らませます」と言われました。「丸投げしたいのはこっちの方なのに、なんでこっちが丸投げされてんの?」と、この発言には唖然としてしまいました。
  • 打ち合わせ中はパン屋についておいらたちが彼らに教えてあげているような状態でした。ある程度は事前に伝えておいたので、もう少し前もって勉強してくることはできなかったんでしょうか?
  • 大手のハウスメーカーなので、まあ何をやるにしても高いです。それはおいらたちも覚悟できていました。しかし、それでもおいらたちの状況を考えて、できるだけ安くするための努力や創意工夫は見せてほしかったです。「そんな予算だとプレハブ小屋みたいなパン屋しかできない」とか、あれもできない、これもできない、「できないだらけ」の話ばっかりで、ちっとも展望が見えませんでした。
  • 営業さんたちいわく、「確かにわれわれは高いが、品質やアフターケアはしっかり保証します」と言います。まあ、確かにそれはそうだと思います。しかし、そのあとに「安い工務店や設計会社には注意してください。頻繁に追加請求をされたり、値段が安くても雨漏りがしたり、法的事項を満たさないまま建物を建ててしまったりすることがよくありますから」というネガティブキャンペーンが続きます。おいらたちにあまり好印象を与えていない状態でのネガティブキャンペーンは、ある意味ただの脅迫のように聞こえてしまいます。
  • それから数日後、電話がかかってきました。嫁さんいわく、「色々検討したのですが、500万円はさすがに無理です。1000万円ぐらいないと・・・」という話だったそうです。ハウスメーカーゆえの制約だとは思いますが、それにしてもおいらたちの要求からあまりにかけ離れてしまっています。
  • 最初に打ち合わせをした段階で「ここで頼むことは絶対ないな」と思っていたので、「それじゃあ、結構です」という旨の話をしたところ、「もういちど検討させてください、やりなおしてきます」としつこく食い下がってきたそうです。何回断っても「もう一度、もう一度」としつこいので、嫁さんもイライラしたらしいです。最後には「私たちのためじゃなくて、自分たちの営業成績をあげたい一心じゃないのか」と勘ぐってしまったそうです。

デキる営業さん(社長さん)

もう一件は知り合いの方が「デザイン重視でなおかつ安いよ」と紹介してくれた小さなリフォーム会社です。
この会社からは「家が近いから」という理由で社長さんが自らやってきてくれました。
実はおいらはまだこの社長さんとはお会いしていません。
以下はすべて嫁さんから聞いた話なのですが、話を聞く限り「この間の営業とは全然違う。まさに正反対だな」という印象を強く抱きました。

  • まず、オシャレ(笑)。40歳ぐらいらしいですが、見た目も結構若く、小物にもこだわっていると感じたようです。まあ、デザイン重視のリフォーム会社の社長というのであれば、容易に想像が付く話ではありますが (^ ^;
  • 家に入ると、我が家を見回して嫁さんの好みを当ててきたそうです。また、家とは無関係なブランドの好みや好きな色などを聞いて、嫁さんの趣味や嗜好を把握しようとしたそうです。いきなりお金の話から入るどこかの営業とは違う (^ ^;
  • そこから設計の話に移ったのですが、話がすごく具体的で嫁さんの頭にもどんな店が出来上がりそうなのかイメージがわいてきたそうです。たとえば「ここにはxxセンチぐらいの扉を作りましょう」とか「外観は白を基調として、前面にはガラス張りの・・・」といったような。何をどうしたらいいか分からないおいらたちにとっては、そういう具体的な話は大歓迎です。
  • さらに機能性やデザインバランスの側面からの説明もきちんとしてくれたそうです。たとえば「そこにxxxがあるとxxxの面で不利だ」とか「自宅の外観がxxxなので、店舗はxxxな感じにしておいた方がいい」とか。技術的なスキルの裏付けもしっかりありそうですよね。
  • 話をしていると社長さんから次から次にアイデアが出てきたそうです。実はこの社長さんもパン屋の設計をしたことがありません。しかしおそらく、これまでの豊富な経験や基本的な技術力を新しい分野にも応用できるスキルを持っているんだと思います。
  • パン屋の経験がないとはいえ、事前にちらっと伝えていたオーブンのカタログをすでに持ってきていたらしいです。おそらく打ち合わせまでにどこかで入手してきたんでしょう。こうした取り組みは打ち合わせまでの準備や調査もきっちりやってきている印象を与えます。
  • この社長さんからはほとんど「できない」という話が上がらなかったそうです。できない理由を語るのではなく、毎回「それじゃあ、こうしましょう」という別のアイデアを出してくれたそうです。何かと言い訳しがちなおいらは、こういう姿勢は非常に見習いたいですね (^ ^;
  • 「オシャレ = ムダに高そう」というイメージを抱きがちですが、値段も結構リーズナブルみたいです。「僕の頭の中にあるイメージだと大体300万円ぐらい。500万もあったら十分すぎる」と言われたときには、おいらも嫁さんも驚きでした。
  • 前述の「デキない営業さん」が言っていたネガティブキャンペーンの話も聞いてみましたが、「追加リクエストがない限り、費用は発生しない」「法的事項もないがしろにはしない」とはっきり明言してくれたそうです。

おいらたちの仕事はどうだろう?

どちらの営業さん(社長さん)もパン屋の設計をしたことはないというのに、あまりにも対照的だったことが分かると思います。
大手のハウスメーカーと小さなリフォーム会社という違いはありますが、この違いは決して規模の違いだけが影響しているわけではありません。
会社の違いというよりも、その人自身の仕事に関するセンスやスキル、積極性などが全然違うんだと思います。


嫁さんは「あの社長さんと話している時はすごく楽しかった。夢がものすごく広がった。」と楽しそうに言っていました。
反対に「ハウスメーカーの営業さんと話している時は全然楽しくなかった。」と言います。


まだパン屋が出来上がったわけではありませんが、一回打ち合わせをしただけであまりにも大きな満足度の違いが出ています。
社長さんの仕事って絶対プロの仕事だよなあ、とおいらは思います。
実際に会ったことはないにも関わらず、嫁さんの話しぶりからそう思います。


おいらたちも仕事上、顧客とお話しする機会がよくあると思います。
この社長さんのように、顧客のニーズを把握し、技術的な知見に基づいて色々なアイデアを出したり、前向きな提案をしたりして、打ち合わせの段階から顧客を満足させることって、おいらたちのような仕事でも重要ですよね。
楽しそうな嫁さんの話を聞きながら、「プロとはこうあるべきだよなあ。こういうところは見習わないと」と思ったおいらなのでした。