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プログラミング、リモートワーク、田舎暮らし、音楽、etc.

「未経験からITエンジニアとして就職するにはどうすればいいか?」という問いに対する、僕なりの答え

はじめに

去年「プロを目指す人のためのRuby入門」(通称チェリー本)という書籍を発売したこともあって、最近はTwitter等で「未経験 or 異業種からITエンジニアを目指して勉強中です」という読者さんをよく見かけます。
本の筆者として、そういった読者さんにはぜひがんばってもらいたいのですが、現実問題としては新卒でもない限り、未経験の状態からさくっとIT企業(特にWeb系、ベンチャー系の企業)に就職するのはなかなか大変なようです。

僕はなんだかんだで15〜16年かけて業界のいいポジション(それなりのお給料をもらいながら楽しく働いてる状態)についちゃってますが、そういう方を見かけると「おお、みなさん大変そうだなあ。もし僕が今、未経験からITエンジニアを目指すことになったら、どうするかなあ🤔」ということを想像したりします。

というわけで、このエントリでは「未経験からITエンジニアとして就職するにはどうすればいいか?」という問いに対する、僕なりの答えを書いてみることにします。

とにかく必死に勉強、勉強、勉強・・・??

Twitter等でよく見かけるのは、以下のような勉強や準備をしたのちにIT業界への就職を目指している方です。

  • ProgateでRubyプログラミングの勉強を始めました
  • Railsチュートリアルをやりました
  • チェリー本を読みました(ありがとうございます!!)
  • プログラミングスクールに通いました
  • 自分の作品(ポートフォリオ)を作成しました

この中に何か問題はあるでしょうか?
  ・
  ・
  ・
いえ、特にありません!未経験の状態からであれば、上記のステップはどれも無駄になることはないと思います。
ですが、これだけで就職するのに十分かと言われると、なかなか難しいと思います。

ここで「そうか、やっぱりもっと勉強しないとダメだよな」と思ったみなさんは、半分正解で半分間違いです。

もっと勉強が必要なのは確かです。ITエンジニアとして働くためには膨大な知識が必要になります。
ただ、ひたすら勉強さえすれば就職できるのかというと、そうではないと思います。
そもそも未経験の状態から現役エンジニアに追いつけるまで勉強しようとすると、それだけで何年もかかってしまいます。

IT業界への就職を希望する「あなた」と「キュウリ」のメタファ

僕が思うに、勉強と同じぐらい大事なのは「客観的な視点」です。
ちゃんと周りが見えてますか?選考書類に目を通したり、面接をしたりする企業の人たちの視点や気持ちは想像できていますか?

もし、自分と同じように「Progateをやって、Railsチュートリアルをやって、チェリー本を読んで、スクールに通って、ポートフォリオを作ってきました」という人が隣に座っていたときに、隣の人ではなく、自分を選んでもらえる自信はありますか?
(Yesの場合)その理由は何ですか?
(Noの場合も)その理由は何ですか?

もし、自分と同じような勉強をしている人が5人いたら?10人いたら?50人いたら?100人いたら??
その中から自分を選んでもらえる自信はありますか?
いや、逆に企業の人があなたを選ぶ理由はなんですか?

野菜売り場のキュウリを想像してみてください。
何十本もある同じようなキュウリから「他のどのキュウリでもダメだ!!絶対お前しかいない!!」と思いながらキュウリを選ぶことはありますか?
そりゃ、多少の色ツヤの違いや大きさの違いから、売れやすいキュウリと売れにくいキュウリの差は出てくるかもしれませんが、キュウリの立場からすれば自分が選ばれるかどうかは、ほとんど「運次第」だと思います。

Cucumbers in buckets

キュウリが何のたとえなのかはわかりますよね?
そうです。あなたのことです。
もっと正確に言えば、あなたと他の就職希望者たちのことです。

戦略、持ってますか?

というわけで、周りの他の人たちと同じことをやっていると、自分が選ばれるかどうかは運次第になってしまいます。
そして、運次第なのであっちこっちに履歴書を送って成功の確率を上げる、「下手な鉄砲数打ちゃ当たる作戦」しか取れなくなってしまいます。
これは非常に効率が悪いですよね。効率が悪いだけでなく、お祈りメールを受け取るたびに心が折れるので、精神衛生上の観点からもよくありません。

じゃあ、どうすればいいのか?
ここはひとつ、明確な「戦略」を立てましょう。

戦略<せんりゃく> strategy

市場に多くの競争相手がいる中で、実際に競争をする以前に有利な状況を作りだしたり、あるいは競争を避けながら有利に展開するための策略。またはその計画。
長期的な視点から策定され、また戦略が明確になっているほど、効果的で効率のよい経営が可能になる。

さ行 | ビジネス基本用語集 | ナビゲート

上記の説明文にあるように、自分と同じような他のキュウリたちと真正面から戦うこと(=勉強量や運だけに頼ること)を避けるために戦略を立てるのです。

企業に選んでもらえる、ただ1本のキュウリになるための戦略を考えよう

「(法に触れない限り)どんな手段を使ってでもいいから、自分というキュウリを手に取ってもらえるようにしろ」と言われたら、あなたはキュウリとしてどんな作戦や工夫を講じますか?

ひるがえって、「どんな手段を使ってでもいいから、自分という就職希望者を選んでもらえるようにしろ」と言われたら、あなたはどんな作戦や工夫を講じますか?

そもそも企業が求めているのは「青くて固いキュウリ」ではなく、「甘くて美味しいマスクメロン(=熟練エンジニア)」かもしれません(というか、おそらくそうでしょう)。
だとしたら、その状況で自分を選んでもらうためには、ますます自分なりの作戦や工夫が大事になってきますよね。

このように、「未経験の状態からIT業界に就職したい!」と考えている人は技術関係の勉強を進めつつ、こういった「戦略」も同時に考えておいた方が、スムーズに就職できるんじゃないかと僕は考えます。

ただし、何ができるのかはその人の立場や状況、持っているスキル等によって変わってくるため、具体的な戦略についてはここでは論じません。
ご自身で自分ができることをじっくり考えてみてください。

参考資料

ここに書いた内容と近い話を、以前「したたか?天然?なんかうまくやってるITエンジニアの生存戦略」というタイトルで発表しました。

当日の動画はないのですが、自宅で発表の練習をしていたときの動画が残っていたので、これを貼っておきます。
喋っている内容は9割方本番と同じです。
youtu.be

ブログにも関連情報を書いているので、よかったらこれらの情報も参考にしてみてください。

blog.jnito.com

まとめ

というわけで、今回は「未経験からITエンジニアとして就職するにはどうすればいいか?」という問いに対する、僕なりの答えを書いてみました。

ただし、気を付けてほしいのは、戦略だけに頼りすぎるのもまた危険だということです。
勉強は勉強で大事なことに変わりはないので、戦略ばかり考えすぎて勉強がおろそかにならないよう注意してください。
二つの車輪をバランス良く回していきましょう。

このエントリの内容が、IT業界への就職を目指しているみなさんの何か参考になれば幸いです😃

人を動かす 文庫版

人を動かす 文庫版

P.S. その一方で・・・

あんまり戦略、戦略、と言ってしまうと、ちょっと賢(さか)しく考えすぎてしまうかもしれません。
戦略を考えたり、勉強をしたりする一方で、もう一つ大事になるのは「好き」という気持ちだとも思います。

  • プログラミングが好き!楽しい!面白い!
  • この企業が大好き!絶対に入りたい!!

この2つの強い気持ちがあなたの中にあれば、自ずと道は開けてくるかもしれません。
「勉強」「戦略」「好きという気持ち」、この3つを大事にしながら、毎日努力していきましょう!

【ネタバレなし】映画「ボヘミアン・ラプソディ」を観て、生まれて初めて泣いた話

はじめに

昨日、映画「ボヘミアン・ラプソディ」を観てきました。
本当は公開されてすぐ観に行きたかったんですが、予定がいろいろ詰まっていて1ヶ月近く観に行けませんでした。
しかし、クイーンファンの僕としては「なんとしても映画館の大スクリーンで観たい!」と思っていたので、昨日妻と二人で観に行きました。
ドラえもんやクレヨンしんちゃんなど、子ども向けの映画を除けば自分で映画館に足を運んだのは5〜6年ぶりかもしれません(もはや最後に何を観たのか思い出せない)。

「すごく良かった」という感想はネットでも僕の周りでも聞いていたんですが、実際に観てみたら・・・本当に良かったです!!😭

というわけで、このエントリでは映画「ボヘミアン・ラプソディ」の感想をネタバレなしでお送りします。

クイーンと私

映画の感想を語る前にまず、僕とクイーンの関係についてお話しさせてください。

僕が生まれたのは1977年で、クイーンのボーカルのフレディ・マーキュリーが亡くなったのが1991年。
その当時、中学生だった僕はまだ洋楽に目覚めておらず、フレディについても「なんか外国のミュージシャンがエイズで亡くなったらしい」という程度の話しかしりませんでした。
もちろん、1985年のライブエイドを実際にテレビで観た、などということもありません。

「クイーン=変なおっさんが歌うエキセントリックなロックバンド」?

そんな僕がクイーンを聴き始めたのは高校時代です。
まずビートルズから洋楽にハマり、その次にハマったのがクイーンでした。

最初にクイーンを知ったのは楽器屋で見かけたこのバンドスコアです。

バンドスコア/クィーンベスト (バンド・スコア)

バンドスコア/クィーンベスト (バンド・スコア)

タンクトップ一枚で熱唱するフレディが載っているこの表紙を見て、僕はクイーンのことを「口ヒゲを生やした変なおっさんボーカルが歌うエキセントリックなロックバンド」という勝手なイメージを持っていました(ひどい)。

ですが、「なんか有名なバンドみたいだし、1回聴いてみるか」と思って、ベストアルバムを借りて聴いてみました。

Greatest Hits 1 & 2

Greatest Hits 1 & 2

僕がクイーンにハマったのはそこからです

クイーンの影響を受けまくった高校時代。

フレディのルックスはいろんな意味でインパクトが強いですが、変な先入観が一気に吹き飛ぶくらい、彼らの音楽は驚くほどカラフルかつキャッチーで、僕は一気にクイーンにハマりました。

当時やってたコピーバンドではWe will rock youをコピーして学園祭で演奏しましたし、「フレディが履いてた靴だから」という理由でアディダスのスニーカーを買って通学用に履いてたりしました。

Untitled

英語の発音について学んだのもクイーンの音楽からです。
(楽曲の方の)「ボヘミアン・ラプソディ」をヘッドホンで聴くとわかると思うのですが、歌の一番最後に出てくる"Anyway the wind blows"という歌詞。
この部分にじっくり耳を澄ますと、「エニウェイザウィンブロオ〜〜〜〜〜ウz」と、最後の最後に、ノイズのような小さな音で、"blows"の"s"の音が聞こえます。

カタカナではよく「ブロウズ(またはブローズ)」と書いたりしますが、「ズ」じゃないんですよね。
"blows"の"s"はまったく喉を動かさず、口の中で息だけをもらして作る雑音のような「z」なんです。

「なるほど、日本人は必ず"zu"のように母音を付けて発音するけど、ネイティブの人たちは母音を付けずに"z"だけで発音するんだ!」ということに気づいたのはクイーンのおかげです。

・・・などなど、クイーンについて語り始めたらキリがありません。

だけど、フレディはもういなかった

残念だったのは僕がクイーンにハマったころにはもうフレディはいなくて、クイーンの活動が止まっていたことです。
ですが、残ったメンバーがフレディのボーカルを編集して新作として1995年に発売した「メイド・イン・ヘブン」だけは、唯一僕がリアルタイムで体験できた新作アルバムの発売です。
もちろん、当時は発売されたその日に買いに行きました!

メイド・イン・ヘヴン

メイド・イン・ヘヴン

このようにクイーンは僕が青春時代にダダハマりしたバンドなので、映画化の話を聞いたときは「うおー、絶対に観に行く!!」と思いました。
しかも予告編の動画からして「これはかなり期待できるのでは?」と思っていました。


映画を観て生まれて初めて泣いた

さてさて、前置きが長くなりましたが、ここからがようやく映画の感想です。

映画の感想は・・・泣きました。

映画を観て泣いたのは生まれて初めてかもしれません。

今までは多少ウルッとくることはあっても、涙までこぼれることはありませんでした。
ですが、今回は生まれて初めて涙が出ました。

映画の前半、4人が初めてライブをやったシーンを観たときは「ああ、クイーンだ。フレディが生き返ってくれた。生まれて初めてクイーンのライブが観られた」と、それだけで目頭が熱くなりました。

そして映画のクライマックス。
・・・うーん、これはもはやうまく言葉にできません。

「フレディはそこにいたんだ。こんなふうに懸命に生きてきたんだ」ということを知って嬉しくなった気持ちと、「でも、今はもういないんだ。目の前でこんなに元気に歌ってくれているのに」という寂しい気持ちが入り混じって、映像を見ながら涙が出てきました。

いや、そんな理屈は抜きでもう純粋に、

「やっぱりフレディが好きだ、ブライアン・メイが好きだ、ジョン・ディーコンが好きだ、ロジャー・テイラーが好きだ、クイーンのみんなが大好きだ!!帰ってきてくれてありがとう!!ずっと会えなかったけど、やっと会えた!!本当に嬉しい!!!」

という思いだけでもう勝手に涙が出てきました。

僕個人のいろんな想いが折り重なって、心の底から感情移入できた

前述のとおり、僕はこれまで映画を観て泣くことは滅多にありませんでした(というかたぶんゼロ)。
それはどこかで「いや、だってこれはフィクションだし」という冷めた自分がどこかにいるからです。
特に感動を誘うために重要人物が突然死んだりする安易な演出が嫌いで、「あ、やっぱり誰か死んだ。誰も殺さずに感動させてよ」と心の中でツッコんだりします(性格悪い)。

今回「ボヘミアン・ラプソディ」を観て気づいたのは、「自分が映画を観て泣けなかったのは、心の底から感情移入できなかったからだ」ということです。

僕はクイーンが大好きですし、この映画もノンフィクションです(演出のために多少事実と異なる設定がある点には目をつむります)。
なので、まるで自分がタイムマシーンで当時に戻ったかのように、もしくは大好きだった人が突然生き返ったかのように、自分の気持ちが映画の中に引き込まれていくのがわかりました。

ビックリするぐらい、クイーンの4人がソックリ!

それにしても、この映画は本当によくできています。
特に、クイーンを演じる4人の役者さんが本当にソックリです。
見た目しかり、話し方やしぐさしかり、そして楽器の弾き方やステージ上でのパフォーマンスまで!!

たとえば、ベースのジョン・ディーコン(上の写真でいうと右下の人)は年代によって髪型がいろいろ変わるのですが、その変遷もしっかり再現されていて「うわー、めっちゃ細かいわー」と一人でうなってしまいました。

顔は似ていても楽器を弾くシーンだけ別カットになっていたりすると、「あー、やっぱり役者さんに楽器は弾けないよなー」と思ってそこで急に現実に引き戻されてしまいますが、この映画では役者さん本人が楽器を弾く姿も映っています。
しかもその弾き方まで非常によく似ているので(たとえばブライアン・メイがジャーンとギターをかき鳴らすときのポージングとか)、まったく現実に引き戻されることなく、むしろ逆に「そこにクイーンがいる!」としか思えませんでした。

クイーンファンでない妻も「面白い」と言ってくれた

今回は妻と一緒に観に行ったのですが、妻は別にクイーンファンではありません。
「とりあえず一緒について行くけど、退屈になったら寝ちゃうかも」とまで言ってたのですが、最初から最後まで妻は目を開けてちゃんと観ていました。
しかも、「クイーンファンじゃないけど、めっちゃ良かった!また観たい!!」とまで言ってくれました。

妻は映画に退屈したり、ストーリーが小難しくなってきたりすると本当に寝てしまう人なので、「今日も絶対に寝るだろうな」と思ってたのですが、上映中に一睡もしなかった上に「面白い」という感想まで出てきたのはとても意外でした。

映画を観てからは、妻もSpotifyでクイーンの音楽を自らすすんでかけたりしています。
なので、クイーンファンならずとも、かなり楽しめる映画になっているんじゃないかと思います。

まとめ

というわけで、今回は映画「ボヘミアン・ラプソディ」の感想について、あれこれ熱く語ってみました。

今の若い人はクイーンのような古いロックバンドにはあまり興味がないかもしれません。
ですが、同じように興味がなかった妻も「面白い」と太鼓判を押していたので、純粋に「普通の映画」を観に行く気持ちで足を運んでも十分楽しめるかもしれません。

そして、僕みたいにクイーンが大好きな方は、絶対に観に行くべきです!!
いや、わざわざ僕が言うまでもなく、すでに観に行った人も多いと思いますが、本当によくできているので、まだ観ていない人はぜひ映画館へ観に行きましょう!

ボヘミアン・ラプソディの評価:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

www.foxmovies-jp.com

ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)

ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)


映画『ボヘミアン・ラプソディ』日本オリジナル予告編解禁!


映画『ボヘミアン・ラプソディ』メイキング映像「クイーンになるまで」”本物”ブライアン・メイ、ロジャー・テイラーらも絶賛!

パターンマッチ&コピペプログラミングと、塾講師時代の思い出

はじめに

最近ネットを見ているときに知ったのですが、世間には「パターンマッチとコピペ」と呼ばれるプログラミングスタイルがあるそうです。

これはあまり深く考えずに、

困ったらググる
 ↓
とりあえずそれっぽいコードを見つけてコピペする
 ↓
動けばOK、動かなければ他のコードを探してコピペする

という手順を繰り返してプログラムを完成させるプログラミングスタイルなんだそうです。

「パターンマッチとコピペ」というプログラミングスタイルが語られたのは、僕が知る限りこちらのツイートが最初です(もしかすると、もっと昔からあるのかな??)。

このスタイルを良しとするかどうかは人によって意見が分かれるようですが、僕自身はあまり良くない考え方だと思っています。

余談:本来のプログラミング用語としての「パターンマッチ」とは

ご存じの方も多いと思いますが、「パターンマッチ」とは関数型言語でよく使われる言語機能のことです。
たとえば、以下はパターンマッチを使ったF#のコード例です。

type Color =
    | Red = 0
    | Green = 1
    | Blue = 2

let printColorName (color:Color) =
    // パターンマッチで処理を分岐させる
    match color with
    | Color.Red -> printfn "Red"
    | Color.Green -> printfn "Green"
    | Color.Blue -> printfn "Blue"
    | _ -> ()

printColorName Color.Red
printColorName Color.Green
printColorName Color.Blue

出典: パターン マッチ (F#) | Microsoft Docs

注意していただきたいのは、関数型プログラミングにおける「パターンマッチ」はただの言語機能(またはプログラミングテクニック)であり、それ自体にまったくネガティブな意味はない、ということです。
ですので、関数型プログラミングを学んでいるときに「パターンマッチ」という言葉に出会っても、「これって使わない方がいいのかな?」とか思ったりしないようにしてください。

塾講師時代の生徒にも「パターンマッチ」で解こうとする子がいた

ところで話は変わりますが、僕は大学時代、塾講師のバイトをやっていました。
成績のいいクラスも成績の悪いクラスも、どちらも受け持っていましたが、今考えると「あー、あれは一種のパターンマッチだったのかもしれない」と思うことがあります。

たとえば、成績の悪い子のクラスを受け持っていたときによく見られたのが、こんな光景です。

Aくん、ここの式はどうなるかわかる?
 ↓
う〜ん、y=3?(と言って、僕の顔を見る)
 ↓
(僕が首をかしげたのを見て)いや、違う違う、y=5分の3?(また僕の顔を見る)
 ↓
(相変わらずダメそうなのを見て)あー、そうそう、y=8!!なあ、そうやんな!?(と言いながら、また僕の顔を見る)
 ↓
(以下これの繰り返し・・・)

このとき、Aくんは問題文に載っている数字を適当に組み合わせ、僕が「うん、そうだね」と言うまで、それらを足したり引いたり掛けたり割ったりし続けます。
ですが、本質的なことは何も分かっていないので、そう簡単には正解にたどりつけません。
もし仮にパターンマッチに成功して正解が得られたとしても、それはただの偶然なので、本番のテストではまったく点が取れません。

一方、成績のいいクラスではこういう光景はほとんど見られませんでした。
同じような質問をしても、成績のいいクラスの子はすぐには答えず、じ〜っと問題文を見つめて頭の中で何かを考えます。
そして、しばらく経ってから静かに自分の答えを口に出します(で、だいたい正解します)。

三つ子の魂百まで?(パターンマッチ魂も百まで?)

プログラミングを学んでいる人の中にも、このように「じっくりとロジックを追いかけて正しいコードを見つける人」と、「とりあえずググる!コピペする!ググる!コピペ!ググる!コピペ!を延々と繰り返す人」に大きく分かれるのではないでしょうか。
そして、後者の人はもしかすると、小さい頃からパターンマッチで勉強の答えを見つけようとしてきた人なのかもしれません。

ただし、学校の勉強や入試とは違い、コードを書くときは「ググる」というオプションは禁じ手ではありません。
また、正直に白状すれば、僕自身もたまに「パターンマッチ&コピペ」で動くコードを探してくることがあります。
ですので、「パターンマッチ&コピペ」が100%ダメだとは言いません。

とはいえ、ググって答えが見つからなければそこで詰んでしまいますし、たとえ答えが見つかっても自分が書いたコードを自分が理解できていないので、それ以上自分のコードをどうすることもできません。
そう考えるとやはり、「パターンマッチ&コピペ」プログラミングは害悪の方が大きいと言えるでしょう。

もしあなたが「パターンマッチ&コピペ」ばかりを繰り返してコードを書いているプログラマなのであれば、一度立ち止まって、じっくりと順序立ててロジックを追いかける練習をしてみてください。

2018.11.29追記:「パターンマッチ&コピペ」で帰納的に学習する?

「パターンマッチ&コピペ」は害悪が大きいと書きましたが、次のような場合は例外かもしれません。
それは「パターンマッチ&コピペ」でプログラムを目的通りに動かしたあと、自分が書いた(というかコピペした)コードをふりかえって、コードの意味や構文を理解しようとした場合です。

つまりこれは「パターンマッチ&コピペ」を利用して帰納的に学習するスタイルです。
この方法であれば「パターンマッチ&コピペ」でプログラムを書いたとしても、結果的にはきちんとプログラミングスキルを向上させたことになるはずです。

ですが、このやり方はイージーではなく、むしろ高度な学習方法だと思います。
そして、「パターンマッチ&コピペ」を多用するプログラマで毎回この手順を踏んでいる人は、おそらくごく少数ではないかと推測します。

まとめ(と宣伝)

・・・などと、なんか偉そうにつらつら書いてしまいましたが、もともと言いたかったことはなんてことはありません。
「あー、最近よく目立つコピペプログラマと塾講師時代に見てきたあの子たちは、きっと同じ部類なんじゃないかなー」とふと思ったので、それが言いたかっただけです(笑)。


ちなみに、僕が執筆した「プロを目指す人のためのRuby入門」は読者のみなさんが「パターンマッチ&コピペ」プログラマにならないよう、しっかり順序立てて体系的にRubyプログラミングを説明しています。

本書を読めば「今まで呪文のようにしか見えなかった不思議なRubyの構文」や「実はあまりよくわからないまま、見よう見まねで書いているRubyコード」も自信をもって読み書きできるようになるはずです。

「パターンマッチ&コピペ」プログラマから脱却したい人はぜひご一読くださいませ!(という宣伝でなぜか締めくくりますw)