はじめに
先月、CodeIQにビンゴカード作成問題を出題しました。
CodeIQに「ビンゴカード作成問題」を出題しました。みなさんの挑戦をお待ちしてます! - give IT a try
このビンゴカード作成問題、ありがたいことに50人もの方が解答を送ってくれました。
挑戦してくださったみなさん、どうもありがとうございました。
前回のエントリでは優秀作品ベスト3を発表しました。
今回のエントリはその続編です。
一部の解答(5本)について、僕が実際にいただいた解答を採点しつつ、リファクタリングする様子を動画に撮っておいたので、その様子をお見せしちゃいます。
おさらい「ビンゴカード作成問題」とは?
ビンゴカード作成問題とはその名の通り、Rubyを使ってビンゴカードを出力する問題です。
Bingo.generate_cardというメソッドを呼ぶと以下のような文字列を出力する、というのが要求仕様です。
B | I | N | G | O 13 | 22 | 32 | 48 | 61 3 | 23 | 43 | 53 | 63 4 | 19 | | 60 | 65 12 | 16 | 44 | 50 | 75 2 | 28 | 33 | 56 | 68
ビンゴカードには作成のルールがあります。
- 各列の値は以下の条件を満たすこと
- B:1~15のどれか
- I:16~30のどれか
- N:31~45のどれか
- G:46~60のどれか
- O:61~75のどれか
その他にも次のような条件があります。
- 毎回異なるカードを生成すること
- どの数値も重複しないこと
- 各列はパイプ(|)で区切ること
- 数字や"BINGO"の文字は右寄せで出力すること
- 真ん中(FREEになる場所)はスペースを出力すること
予め用意されたテストを全部パスすればクリア!
解答を提出する際はこちらで予め用意したRSpecのテストを全てパスさせる必要があります。
RSpecのテストを含む解答テンプレートについてはこちらに置いてます。
動画の視聴設定について
今回公開した動画を視聴する場合は、画質をHDに、再生速度を倍速(2倍)にして設定するのがオススメです。
画質が荒いと字が潰れてコードが読みにくくなりますし、通常の速度だとちょっとダラダラしてしまうので、倍速で見るぐらいがさくっと最後まで視聴できてちょうどいいんじゃないかなと思います。
おまけ・RubyMineのリファクタリング機能も動画で見られる!
今回の採点作業でも普段愛用しているRubyMineを使っています。
特に強力なリファクタリング機能や、グラフィカルなテストの進捗表示なんかは普段テキストエディタしか使っていない人にとっては興味深いんじゃないかな~と思います。
RubyMineに興味がある方はそちらにも注目してみてください!
RubyMine: Ruby on Rails IDE by JetBrains
それではここから実際の解答例を紹介していきます。
今回紹介する解答例は全部で5本です。
解答例その1「他の言語の影響がちょっと強いかな?」
リファクタリング前
class Array def shuffle() shuffleBody(self.dup) end private def shuffleBody(inList) return [] if inList.size == 0 retVal = [] while inList.size > 0 randID = rand(inList.size) retVal.push(inList.delete_at(randID)) end return retVal end end class Bingo def self.setupInitialList(startNum, endNum) retList = [] startNum.upto(endNum){|i| retList.push(i)} return retList end def self.generate_card numListSet = Hash::new numListSet["B"] = Bingo.setupInitialList(1, 15).shuffle().map{|i| sprintf("%2d",i)} numListSet["I"] = Bingo.setupInitialList(16, 30).shuffle().map{|i| sprintf("%2d",i)} numListSet["N"] = Bingo.setupInitialList(31, 45).shuffle().map{|i| sprintf("%2d",i)} numListSet["G"] = Bingo.setupInitialList(46, 60).shuffle().map{|i| sprintf("%2d",i)} numListSet["O"] = Bingo.setupInitialList(61, 75).shuffle().map{|i| sprintf("%2d",i)} numListSet["N"][2] = " " characterList = ["B", "I", "N", "G", "O"] buffer = "" buffer << characterList.map{|c| " #{c}"}.join(" | ") + "\n" 0.upto(4){|i| lineBuffer = [] characterList.each{|character| lineBuffer.push(numListSet[character][i]) } buffer << lineBuffer.join(" | ") + "\n" } return buffer end
リファクタリング後
キャメルケースになっていた変数名やメソッド名をスネークケースに変換したり、コードをDRYにしたりしています。
また、Array#shuffleは車輪の再発明になっていたので削除させてもらいました。
class Bingo def self.generate_card range_array = [ 1..15, 16..30, 31..45, 46..60, 61..75 ] col_values = range_array.map {|range| range.to_a.shuffle.map { |n| n.to_s.rjust(2) } } character_list = 'BINGO'.chars num_list_set = character_list.zip(col_values).to_h num_list_set["N"][2] = " " header = character_list.map {|c| c.rjust(2) }.join(" | ") body = 5.times.map {|i| character_list.map {|character| num_list_set[character][i] }.join(" | ") } [header, body].join("\n") end end
動画で見るリファクタリング風景
解答例その2「ブロックはネストさせすぎないように!」
リファクタリング前
class Bingo def self.generate_card title = %w(B I N G O) row = title.size range = 15 title.map { |t| format('%2s', t) } * ' | ' + "\n" + (Array.new(row) do |i| Array.new(range) { |j| (i * range + j + 1) }.sample(row) end).transpose.map!.with_index do |l, i| l.map!.with_index do |r, j| (i != row / 2 || i != j) ? format('%2d', r) : ' ' end * ' | ' end * "\n" end end
リファクタリング後
リファクタリング前のコードはぱっと見、短くまとまっているように見えますが、よく見ると後半はかなりブロックがネストしていて、何をやっているのかわかりづらいです。
そこでもう少しコードを分解して、コードの意図がわかりやすくなるようにリファクタリングしてみました。
class Bingo def self.generate_card title = 'BINGO'.chars col_size = title.size range = 15 title_str = title.map { |t| t.rjust(2) } * ' | ' numbers = col_size.times .map { |i| range.times.map { |j| (i * range + j + 1) }.sample(col_size) } .transpose body = numbers.map.with_index do |row, row_index| row.map.with_index { |col, col_index| center = row_index == col_size / 2 && row_index == col_index center ? ' ' : col.to_s.rjust(2) } * ' | ' end [title_str, body].join("\n") end end
動画で見るリファクタリング風景
解答例その3「もっとDRYにできますよ!」
リファクタリング前
require 'set' class Bingo ROW_MAX = 5 def self.generate_card columns = [] columns << unique_random_range(1..15, ROW_MAX) columns << unique_random_range(16..30, ROW_MAX) n_column = unique_random_range(31..45, ROW_MAX - 1) n_column.insert(2, " ") columns << n_column columns << unique_random_range(46..60, ROW_MAX) columns << unique_random_range(61..75, ROW_MAX) bingo = columns.transpose bingo.unshift(%w(B I N G O)) formatted = bingo.map do |column| column.map {|s| sprintf "%2s", s }.join(" | ") end formatted.join("\n") end private def self.unique_random_range(range, count) nums = Set.new while nums.size < count nums << rand(range) end nums.to_a end end
リファクタリング後
こちらのコードもDRYになっていなかったので、どんどんDRYにしていきました。
それと unique_random_range メソッドのロジックはArray#sampleを使えばすぐに実現できそうだったので、メソッドごとなくしました。
class Bingo ROW_MAX = 5 def self.generate_card range_array = [ 1..15, 16..30, 31..45, 46..60, 61..75 ] columns = range_array.map {|range| range.to_a.sample(ROW_MAX) } columns[2][2] = ' ' bingo = ['BINGO'.chars, *columns.transpose] bingo.map { |column| column.map {|s| s.to_s.rjust(2) }.join(" | ") }.join("\n") end end
動画で見るリファクタリング風景
解答例その4「Ruby初心者さん、いらっしゃい!」
リファクタリング前
class Bingo def self.generate_card s = " B | I | N | G | O\n" # 数値の生成 num = [] for i in 0...5 do num += generate_number(i*15+1) end # 出力 for i in 0...5 do for j in 0...5 do if (num[j * 5 + i] < 10) s += " " end if (j * 5 + i == 12) s += " " else s += num[j * 5 + i].to_s end if (j != 4) s += " | " end end s += "\n" end print(s) return s end # 指定された数値から+15までの範囲から、 # 5つの数値を取得し、配列として返す def self.generate_number(start) num = [] for i in start...start+15 do num << i end num.shuffle! return num[0, 5] end end
リファクタリング後
解答者の方は今回初めてRubyを触ったそうです。
なので、forループが登場したりしています。
そこでロジックはほぼ変えずにRubyっぽい書き方や、Rubyが標準で提供しているAPIにどんどん置き換えていきました。
class Bingo def self.generate_card # 数値の生成 numbers = 5.times.flat_map do |i| start = i * 15 + 1 [*start..(start + 14)].sample(5) end # 出力 body = 5.times.map do |row| 5.times.map { |col| center = col * 5 + row == 12 center ? " " : numbers[col * 5 + row].to_s.rjust(2) }.join(' | ') end title = " B | I | N | G | O" [title, body].join("\n") end end
動画で見るリファクタリング風景
解答例その5「マス目の上限が自由に変えられます」
リファクタリング前
# # 出題は、5 x 5 の升目固定でしたが # タイトルの文字数と使える数の上限を指定できる # ようにクラスメソッド generate_card_flexible # を定義 # generate_card からは、generate_card_flexibleを # コールするようにしています # class Bingo def self.generate_card # 以下の行は削除して、自分でロジックを実装してください。 generate_card_flexible('BINGO', 75) # generate_card_flexible('LARGE BINGO', 400) # generate_card_flexible('LARGER BINGO', 450) end # # generate_card_flexible(header, n) -> String # ビンゴカードを生成するメソッド # 第1引数にビンゴカードのヘッダを指定。 # 第2引数にビンゴカードで使用できる数字の上限 # を指定する。 # 第1引数で指定されたヘッダの文字数に合わせた # ビンゴカードを生成する。 # ヘッダの文字数が偶数のときはヘッダの先頭に # 空白が追加される。 # ヘッダの文字に指定できるのは半角のみ。 # 全角文字には対応していない。 # def self.generate_card_flexible(header, n) # ヘッダーの文字列からビンゴの1辺のサイズを求める。 len = header.length # 1辺のサイズが偶数だと真ん中がなくなるので # 1辺のサイズを1増やす # ヘッダーは空白を1文字先頭に付加する if len % 2 == 0 len += 1 header = ' ' + header end # 数字の個数がビンゴの升目より少ない # ときはエラーにする。 if n < len * len raise "can't generate card!!! #{n} must be larger than #{len*len}." end # 1 から n までの数字をlen等分する。 ary = (1..n).to_a.each_slice(n/len).to_a # 数字が綺麗に(n/len)個ずつ分割できなかったときの微調整。 # 最後の2つをまとめることにする。 # (今回は考慮しなくてもよいけど。) ary[-2] += ary[-1] if ary.size > len # ランダムに数字を5個ずつ抽出して # ヘッダーの1文字を先頭につけて # 文字幅を微調整する。 # ヘッダーの文字は半角のみであることを想定しているけど、 # 今回はそれでよしとする。 cols = (0..len-1).map {|i| ary[i].sample(len).unshift(header[i]).map{|i| i.to_s.rjust(n.to_s.length) } } # 真ん中をブランクにする。 cols[len/2][len/2 + 1] = ' '.rjust(n.to_s.length) # 行と列を入れ変えて" | "で区切って # 1つの文字列にして完成 cols.transpose.map {|ary| ary.join(" | ") }.join("\n") end end
リファクタリング後(省略)
この方は独自に問題を拡張して、マス目の上限を自由に変更できるロジックを書いてくれました。
なのでちょっとコードが長くなっています。
ただ、コードは長いものの、コード自体はすごくきれいに書かれてあるので、ほとんど手直しする部分がありませんでした。
というわけで、リファクタリング後のコードは省略させてもらいます。
動画で見るリファクタリング風景
Ruby - ビンゴカード作成問題・解答例その5 - YouTube
今回紹介する解答例は以上です。
挑戦してくださったみなさん、どうもありがとうございました!
ここからあとは総評を兼ねて、きれいなコードを書くためのポイントを説明していきます。
シンプルでスマートなコードを書くポイント
50人もの解答を見ていると、何となく「こんなふうに書けばいいのになー」と感じるポイントが似通ってきます。
それは一体何なのか?具体的なポイントを見ていきましょう。
Rubyの標準APIを活用する
RubyのStringやArray、Enumerableには便利なメソッドがたくさんあります。
思いついたロジックをコードとして表現する前に、まず標準APIを使ってラクができないか調べてみましょう。
たとえば今回の問題であれば、以下のようなメソッドの出番が多いと思います。
- Enumerable#map
- Array#sample
- Array#join
- Array#transpose
- String#rjust
コードを書くときはAPIドキュメントをよく読んで、車輪の再発明をしていないか調べる癖を付けましょう。
Ruby 2.2.0 リファレンスマニュアル > ライブラリ一覧 > 組み込みライブラリ
また、僕が以前Qiitaに書いたこの記事も参考になると思います。
[初心者向け] RubyやRailsでリファクタリングに使えそうなイディオムとか便利メソッドとか
徹底的にDRYにする
みなさんからもらった解答を見ていると、今回はこんなコードを書いている人がたくさんいました。
bingo = [ (1..15).to_a, (16..30).to_a, (31..45).to_a, (46..60).to_a, (61..75).to_a, ]
きれいと言えばきれいなんですが、to_aを何度も書いてしまっています。
これはmapを使えばDRYにできます。
bingo = [ 1..15, 16..30, 31..45, 46..60, 61..75 ].map(&:to_a)
さらに言えば、これらの数字は15ずつ増える、という規則性を持っているので、ここもDRYにできます。
bingo = (1..75).each_slice(15).to_a
each_sliceは引数で与えた数の分だけ配列等のコレクションを分割するメソッドです。
ここでは1から75までの数字を15個ずつ分割して、配列の配列を作っています。
他にも区切り文字の縦棒(|)や改行文字(\n)もうまくやればコード中に1回しか出てこないようにすることができます。
自分の書いたコードに縦棒や改行文字が2回以上出てきている場合はまだDRYにできる余地があるということです。
さらに自分のロジックに磨きをかけましょう!
最初から完璧なコードは目指さなくてよい
上に書いたようなアドバイスを読むと「最初からそんなに上手に書けるわけないよ!」と思う人がいるかもしれません。
でも大丈夫です。必ずしも最初から完璧を目指さなくて構いません。
最初はぱっと思いついたコードを書き、あとからどんどんリファクタリングする、というアプローチも全然アリです。
実は僕も最初のコミットではこんなコードを書いていました。
class Bingo def self.generate_card b = ['B', *(1..15).to_a.shuffle.take(5)] i = ['I', *(16..30).to_a.shuffle.take(5)] n = ['N', *(31..45).to_a.shuffle.take(5)] g = ['G', *(46..60).to_a.shuffle.take(5)] o = ['O', *(61..75).to_a.shuffle.take(5)] cols = [b, i, n, g, o].map{|array| array.map{|s| s.to_s.rjust(2)}} cols[2][3] = ' ' rows = cols.transpose rows.map{|array| array.join(' | ')}.join("\n") end end
それが最終的にはこんなコードになりました。
class Bingo FORMAT = Array.new(5, '%2s').join(' | ') def self.generate_card ['BINGO'.chars, *numbers].map { |row| FORMAT % row }.join("\n") end def self.numbers (1..75).each_slice(15) .map { |sequence| sequence.sample(5) } .tap { |table| table[2][2] = '' } .transpose end end
ご覧の通り、このコードに至るまで何度もリファクタリングしています。
というわけで、最初から完璧は目指さなくても大丈夫です。
でも、最終的には完璧なコードになるよう、リファクタリングを繰り返しましょう!
リファクタリングを支える技術 = テストコードを書く
ここまでずっとリファクタリング、リファクタリングと繰り返していますが、恐れることなくリファクタリングできるのはテストコードがあってこそ、のことです。
動画の中でも他の人が書いたコードをトライアンドエラーでガンガンリファクタリングしていますが、テストコードがなかったらこんなことはできません。
今回の問題では僕が予めテストコードを用意していました。
しかし、実際の現場では自分でテストコードを書かなければいけません。
テストコードがあるかないかで、リファクタリングのしやすさが天と地ぐらいの差が出てきます。
きれいなコードが書けるようになりたい!という人は、テストコードの書き方も一緒に勉強しておきましょう。
Rubyにおけるテストコードの書き方、特にRSpecの書き方については僕が以前書いたQiita記事や、翻訳した電子書籍の内容が役立つと思います。
「テストコード初心者」の方はぜひ参考にしてみてください。
まとめ
というわけで今回のエントリではCodeIQに出題した「ビンゴカード作成問題」の実際の解答を見ながら、シンプルできれいなコードの書き方について説明してみました。
Ruby初心者の方はこういった動画を見たあとで自分の書いたコードを見直してみると、直したくなるコードがたくさん出てくるかもしれません。
また、自分一人で書いて終わり、ではなく、他の人にコードレビューしてもらうと、さらに効果的です。
職場の同僚にお願いしたり、近くの勉強会に参加したりして、どんどんコードをレビューしてもらう機会を増やしましょう。
実際僕もそんなふうにしてRubyの書き方を覚えてきました。
今回のエントリがみなさんのコードの書き方を見直すきっかけになると嬉しいです ^^
珠玉の優秀作品が見たい方はこちら!
前編では優秀賞ベスト3の発表を行いました。
こちらもあわせて読んでみてください!
Ruby -「ビンゴカード作成問題」の優秀作品ベスト3を発表します! #codeiq - give IT a try
RubyMineが気になる方はこちら!
動画を見ながらRubyMineのことがちょっと気になり始めたあなたへ。
2014年末にQiitaでRubyMineのアドベントカレンダーを作成しました。
この中の記事をパラパラと読んでいくと、さらにRubyMineが欲しくなってくるかもしれませんよ〜!
RubyMine Advent Calendar 2014 - Qiita
PR: みなさんもCodeIQの問題に挑戦&出題してみませんか?
CodeIQでは様々な言語、様々なレベルのプログラミング問題が出題されています。
解答すれば出題者の方からのフィードバックがもらえたり、転職を考えている方には企業からのスカウトが来たりします。
ちょっとした自分の腕試しとして面白そうな問題を探して挑戦してみましょう!
また、挑戦者だけでなく、問題の出題者も募集しています。
「出題に興味がある」という方はぜひCodeIQのお問い合せなどからご連絡ください。