はじめに
先日のエントリでも告知しましたが、2015年3月16日に「人生デザイン U-29」という番組で妻の店(パン屋)を特集してもらいました。
この番組は29歳以下の若者が働く姿を描くドキュメンタリー番組で、25分間まるまる妻が働く様子や僕たち家族の日常が映っていました。
放送を見るまで「いったいどんな番組になるんだろう?」と期待と不安が入り混じった気持ちでしたが、実際に見てみると想像以上にカッコよく(?)妻の働きぶりや家事育児の様子が描かれていました。
番組を見るだけならたった25分間のできごとにしかなりませんが、取材依頼が来てから番組が完成し、放送されるまでには本当にいろんなことがありました。
たぶんテレビの密着取材を受けたことがあるという人は稀だと思うので、今回のエントリではテレビ撮影の舞台裏を紹介してみます。
あ、結構長いエントリなので先に見出しだけ載せておきますね。
- おさらい:妻の店について
- ついでに:僕の仕事について
- 取材依頼(1月上旬)
- 取材を受けるかどうかの決断(1月上旬)
- 打ち合わせ(1月中旬)
- リハーサル撮影(1月末)
- 撮影中止の危機(1月末)
- 撮影スケジュールの見直し(2月上旬)
- 本格的な撮影(2月上旬~中旬)
- 編集期間(2月下旬~放送直前まで?)
- 放送一週間前(3月9日~15日)
- 放送当日(3月16日)
- 放送後の反響(3月16日~)
- 反響の大きさゆえの不安
- 放送後初の営業日(今日、3月21日)
- まとめ
- 告知:3月23日(月)に再放送があります!
おさらい:妻の店について
妻がやっているパン屋さん、「Coupe Baguette(クープバゲット)」はこんなパン屋さんです。
- 営業日は毎週金・土の2日だけ
- 兵庫県西脇市にある自宅の敷地内に店舗を構えて営業している
- パン作りから接客まで、店で働いているのは妻一人
- 営業時間は朝10時から売り切れまで
- ただし、事前のお取り置きの電話で開店前に売り切れてしまうことも多い
ついでに:僕の仕事について
僕は渋谷にある株式会社ソニックガーデンという会社でプログラマをやっています。
といっても、渋谷のオフィスで働いているのではなく、自宅で働いています。
いわゆる在宅勤務っていうやつです。
ちょっと前の記事ですが、仕事の様子を取材してもらったこともあります。
取材依頼(1月上旬)
NHKのディレクターさんから取材依頼が来たのは正月休みが明けた1月6日のことでした。
話を聞いたときは「え?テレビ撮影?NHK?全国放送?なんでなんで??」とビックリしました。
どうやら「主婦 起業 兵庫」みたいなキーワードで検索をかけたら僕のブログが引っかかったそうで、そこから今回の取材に繋がったみたいです。
ちなみに検索で引っかかったブログはたぶんこれなんじゃないかと思います。
いや~、自分のブログでこんな話になるなんて。
ブログ書いてたら人生変わりますね!
取材を受けるかどうかの決断(1月上旬)
依頼が来たときは「テレビに出れるの?やったー!撮って撮って!!」・・・ではなく、OKするかどうか非常に迷いました。
むしろ最初はあまり乗り気ではありませんでした。
それは以下のような理由からです。
- 店をわざわざ有名にするつもりはない
- お客さんもすでに十分に付いている、むしろ最近はすぐに売り切れて困っているぐらいなので、これ以上お客さんを増やしたいとは思っていない
- 妻はすすんで前に出ていくタイプではなく、逆に「目立ちたくない」と考えている人間なので、テレビに出るのは恥ずかしい
ただ、U-29はグルメ番組ではなくドキュメンタリー番組です。
番組の趣旨は「若者に向けた働き方の紹介」であり、「美味しいパン屋さん」を宣伝するのが目的ではありません。
そういった事情を踏まえつつ、いろいろ悩んで夫婦で話し合った結果、「自分(妻)の働き方が誰かの参考になるのであれば」と、取材を受け入れることに決めました。
打ち合わせ(1月中旬)
取材を受け入れることが決まったら、次はディレクターさんとの打ち合わせです。
ディレクターさんに自宅まで来てもらい、2回ほど打ち合わせをしました。
2回のうち1回は妻だけでなく、僕も打ち合わせに参加しました。
打ち合わせの中でディレクターさんの質問に答えたり、こちらからの質問や要望を伝えたりして、ディレクターさんに番組の骨格を作ってもらいました。
リハーサル撮影(1月末)
そして1月の終わりにリハーサル撮影(勝手に僕が命名)がありました。
これは放送するための撮影ではなく、本格的な撮影に向けた準備のための撮影です。
ディレクターさんが一人で小型カメラを回して、妻の仕事ぶりや家庭の様子を撮影しました。
撮影中止の危機(1月末)
が、このリハーサル撮影でちょっとした事件(?)がありました。
リハーサル撮影が終わったその日の晩に、妻が心労で寝込んでしまったのです。
たった1日の撮影でしたが、素人がほぼフルタイムで日常生活にカメラを向けられる、というのは精神的な負担がとても大きいことがわかりました。
常にカメラを「無意識に意識してしまう」ので、気付かないうちにすごくストレスが溜まるんです。
僕も撮影前は「カメラなんて気にしなきゃいいんだよ~」と思っていましたが、実際にカメラを向けられるとガチガチに緊張してしまいました。
「変なことをしゃべるとそれがそのまま放送されちゃうかも」なんて考えてしまい、毎回毎回「これは口に出してもいいのか?」と頭の中で自問するので、全然普段のような会話ができませんでした。
このまま本格的な撮影が始まって連日カメラを向けられたら、妻がまた寝込んでしまい仕事や家事に穴を空けてしまうかもしれません。
なので、僕と妻の間で「やっぱり撮影は中止してもらおうか」という話まで出てきました。
ただ、ディレクターさんのこれまでの熱心な働きぶりを見ていたりすると、ストレートに「やっぱりやめます」と伝えるのも心苦しいです。
そこで、僕たちの方から「妻が倒れると困るので無理はできない」という旨の事情を説明し、「お断りしたいこと」と「受け入れ可能なこと」のリストを作ってディレクターさんにお渡ししました。
「お断りしたいこと」にはかなりたくさんのNGリストを書いたので、「結局中止になっちゃうかもな~」と思いました。
とはいえ、お互いに納得のいく形で進めないと意味がありません。
良い着地点が見つけられないのであれば撮影中止もやむなし、と考えていました。
撮影スケジュールの見直し(2月上旬)
一時はこのまま終わってしまうのかと思いましたが、なんとか撮影中止という最悪の事態はまぬがれました。
撮影スケジュールや撮影内容は基本的に僕たちのリクエストに応じてもらう形で新しく組み直してもらいました。
おそらくスタッフの方たちもすでに決まっていた予定をキャンセルしたりして、調整が大変だったとは思いますが。。。
なにはともあれ、これから本格的な撮影に突入していきます!
本格的な撮影(2月上旬~中旬)
本格的な撮影は2月上旬から中旬にかけて行われました。
日数でいうと延べ10日ぐらいです。
一時期はほぼ毎日撮影スタッフの方がやってきました。
仕事の様子だけでなく、プライベートの様子もたくさん撮影することになっていたので、本当にいろんなシーンを撮影しました。
ざっとリストアップするとこんな感じです。
- パンの仕込み
- 開店準備
- 接客の様子
- 家族で朝ご飯を食べる様子
- 家族で晩ご飯を食べる様子
- 妻と僕が二人で昼食を食べる様子
- 妻が晩ご飯の準備をする様子
- 妻が子供と一緒に晩ご飯の準備をする様子
- 妻が家事をする様子
- 妻が弁当を作る様子
- 妻が子供とピアノレッスンを受けている様子
- 妻と僕が息子の授業参観に出席する様子
- 僕の個人インタビュー
- 妻の個人インタビュー
- 妻の母のインタビュー
- お客さんへのインタビュー
- 僕が確定申告に向けた決算処理をする様子
- 妻と僕がで2014年度の売上を確認する様子
- 僕が子供と遊んでいる様子
- 妻が材料のイチゴを買いに行く様子
- 僕がリモートで働く様子
- 妻が娘を幼稚園へ送っていく様子
- などなど
撮影期間中はこんな感じで家の中にもカメラやマイクが入ってきます。(ちょっとシュール・・・)
店の前でインタビューを受けることもありました。
撮影期間中はカメラマンの方がしょっちゅうビデオテープやカメラのバッテリーを交換しているのを見かけました。
全部の撮影が終わったあとにどれくらい撮ったのか質問してみたたところ、なんと17時間分(!)もカメラを回していたそうです。
これが編集されて放送時は25分になるので、約97%の部分がカットされたことになります。
97%ってほとんど全部カットですやん。。。
実際、撮影したけど放送では全く使われなかった、というシーンもいくつかありました。
(僕がパソコンの前で妻の店の決算処理をやってるシーンとかね)
あと、撮影の終盤になると家族もみんなカメラに慣れてきて、あまりカメラを意識せずに喋れるようになりました。
まあ生放送じゃないので、多少変なことを言っても後からなんとでもなるんですよね。
それに映像が出ているからといって、必ずしも喋っている声も一緒に流れるとは限らないですし。(ナレーションが流れているときとか)
「どうせあとで編集されるから」と考えると、少し気が楽になりました。
編集期間(2月下旬~放送直前まで?)
撮影が一通り終わると、今度は編集期間です。
ここは基本的に僕たちはノータッチなので詳しいことはよくわかりません。
(膨大な量のビデオの中から使える部分を見つけてつなぎ合わせていくので、相当大変な作業であることは間違いないと思いますが。。。)
撮影は終わっていますが、この期間に放送用の素材として昔の家族写真や、妻が開業直前に付けていた日記なんかを渡したりしました。
あと、妻と僕はBUMP OF CHICKENのファンなので、BUMPの曲をBGMとして使えないか?というリクエストも出しました。
最初は「希望は出しておくが使えるかどうかわからない」という話でしたが、最終的には使ってもOKという回答が返ってきました。(やった!)
ただし、「どの曲をどこで使うかは放送までのお楽しみ」とのことでした。(何が流れるのかな~?)
放送一週間前(3月9日~15日)
放送の一週間前、番組の終わりで次週予告の動画が放送されました。
いやあ、予告動画だけでもなんかドキドキしますね。
とりあえず動画を見た感想は・・・
「関西弁怖い」
でした。(苦笑)
緊張して笑顔がないところにいつもの関西弁が重なると、なんかすごく怖い人に見えちゃうことがわかりました。
はい、ふだん関西弁を使っている人はテレビに出るときに気をつけましょうね!
ちなみに、前述の通り妻はできるだけ目立ちたくないと考えている人なので「テレビに出るよー」みたいなことは誰にも言っていませんでした。
ですが、それでも全然誰も気付かないというわけにはいきません。
むしろ、噂が噂を呼んで(?)妻は知り合いやお客さんから何度も「今度テレビに出るんやって!?」と言われたらしいです。
(僕たちは黙っていましたが、どうやら両親や親戚が宣伝しまくってたようです。。)
放送当日(3月16日)
さて、ついに放送日がやってきました!
家族みんなでテレビの前でスタンバイです。
19時25分、放送スタート!
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19時50分、放送終了。
冒頭にも書いたとおり、あっという間の25分間でした。
当事者なので客観的に見られない部分もあるかもしれませんが、それでもなんか、思った以上にちゃんとしたドキュメンタリー番組になっていました。
普段の仕事や生活がこんなドラマチックな内容に仕上がるとは驚きです!
あと、BUMP OF CHICKENの楽曲がいい感じに挿入されていたのも嬉しかったです ^^
放送後の反響(3月16日~)
NHKの番組なので、番組中に店の名前は出てきません。
(注:NHKの方針で、特定の会社や組織の利益に直結するような番組作りはNGになっています)
にもかかわらず、たくさんの方がクープバゲットのWebサイトやFacebookページに訪れてくれました。
まあ、ちょっと検索すればすぐに特定できますよね。。。
インターネットの力はすごいです。
ちなみに、Webサイトの方は普段100件前後のアクセスなのに、放送当日は1200件ぐらいのアクセスがありました。
あと、リアルタイム集計でもピーク時は同時に200人ぐらいの人がサイトに滞在していました。
Facebookページの「いいね!」も一気に200件以上増えました。
これを書いている時点では「いいね!」の件数は1900件ちょっとですが、この調子だとそのうち2000件に到達しそうです。
クープバゲットやU-29のFacebookページにもたくさんのコメントやメッセージが届きました。
放送前はどんな反応が返ってくるのか心配なところもありましたが、好意的なコメントばかりでほっとしました。
特に主婦の方、小さな子供がいる母親の方は年齢を問わず心に響くものがあったようです。
https://www.facebook.com/coupebaguette/posts/1091958220830468
Twitter上での反響も上々でした。
本当にありがたいです。
https://twitter.com/okamtea/status/578028308102676481
昨日見たE-テレのU-29、パン屋さんの回が凄い良かった。旦那さんの働き方もいい、再放送は録画しようかな。https://t.co/aNj6hOmvpM
— Tomoya (@Tomoyamx) 2015年3月17日
なお、Twitter上の反響はこちらにまとめてあります。
togetter.com
あんまり書くとただの自慢話にしか見えなくなるのでこのへんにしておきますが(もう遅いか)、とにかく反響の大きさに自分たちもビックリしてしまいました。
反響の大きさゆえの不安
さて、大きな反響があったこと自体はありがたいのですが、一方で心配なことも出てきます。
それは生産量の問題です。
妻の店は放送前からすでに「これ以上作れません」状態でした。
なので新しいお客さんがどっと増えるとそれはそれで困った問題になってしまうのです。(贅沢な悩みですが・・・)
そこで妻と相談して、「テレビでクープバゲットを知った方は期間をあけて来店してもらうようにお願いしよう」ということにしました。
そして、その旨を告知したのが、妻が書いたこちらのブログです。
「先日のテレビ番組で初めてクープバゲットを知った方へのお願い」(抜粋)
私が一番心配しているのは、新しいお客様が増えて、これまでのお客様が買いにくくなることです。
家事や育児をしながら3年間このお店を続けてこれたのは、私のことを理解してくれているお客様のおかげです。
テレビを見て買いに行こうと思ってくださるお客様もうれしいのですが、そのためにこれまでのお客様が買いにくくなってしまうのは、私としてはとても心苦しいです。
そこで今回の放送を見て買いに行きたいと思われた方(テレビで初めて知った方)は、大変申し訳ありませんが、少し期間をおいてご来店いただけるとありがたいです。
もしかするとこんなことを書いたら新しいお客さんを怒らせてしまうんじゃないかと心配しましたが、今のところそういった反応はなく、こちらの気持ちをきちんと理解してもらえているようで安心しました。
放送後初の営業日(今日、3月21日)
さてさて、このエントリを書いている今日は放送後初の営業日でした。
はたして今日の客足はどうだったんでしょうか・・・??
こちらは開店準備中の店内の様子。今日はいつも以上にたくさんパンを焼いています。
そしていつもよりちょっと遅めの8時半にメニューを公開して、取り置きの受け付けを開始しました。
そして・・・
朝9時過ぎには早々とソールドアウト!
開店時間は10時なんですが、今日も取り置きの電話だけで売り切れてしまいました・・・。
これってやっぱりテレビの影響?
そう思って妻に尋ねてみましたが、妻いわく、テレビの影響はほとんど感じなかったようです。
すぐに売り切れた理由は昨日が臨時休業だったために、今日来店するお客さんが多かったせいじゃないかなあ、と妻は話していました。
うーん、取り越し苦労だったかな?それともテレビを見てくれたみなさんが気を遣ってくれたおかげ?
なんにせよ変な混乱とかが起きなくて良かったです。ほっとしました。
まとめ
とりあえず、取材の依頼から放送が終わった現在までをまとめるとこんな感じです。
ご覧の通り、まあこの数ヶ月はいろいろ大変でした。。。
僕たちのみならず、スタッフのみなさんもクタクタだったと思います。
しかし、みんなの努力の甲斐あって素敵なドキュメンタリー番組ができあがりました。
また妻も結婚・出産してからの約10年間を見つめ直す良い機会になったようです。
撮影期間中、最も長く顔を合わせたディレクターさんをはじめ、撮影スタッフのみなさんや直接お会いしていない制作のスタッフの方々にも感謝感謝です。
みなさん、どうもありがとうございました!
告知:3月23日(月)に再放送があります!
「3月16日の放送を見逃した」という方にはもう一度チャンスがあります!
3月23日(月)23:25から再放送がありますので、放送を見てみたいという方はこちらを忘れずにチェックしてくださいね~。
- 番組名
- 人生デザイン U-29(Eテレ)
- 放送日時
- 2015年3月23日(月)23:25 - 23:50
- 公式サイトURL
- http://www.nhk.or.jp/u29design/
- Facebookページ
- https://www.facebook.com/nhk.u29