「技術記事を書く技術」にこれを書いておけばよかったなー、という話をふと思い出したので、ここに書いておきます。
「簡単です」と言わない方がいい理由
人に何か物を教える際は、「とっても簡単です」とか「これは誰でもできます」みたいな枕詞は付けない方がいいと僕は思っています。
というのも過去の経験上、「簡単ですよ!」と言われても、話を聞いたら「うーん、そうか??」と思うことも結構多かったからです。
それに、「簡単です」「誰でもできます」と言われたにもかかわらず、もし自分ができなかったら、
「自分はそんな簡単なこともできないんだ」
「誰でもできるのに私だけダメなんだ」
と、自尊心が傷つく原因にもなります。
簡単なのは「あなただから」かも?
教える側が「簡単ですよ」と話す場合、「自分が経験豊富な専門家だから」というケースもよくあります。
自分では「こんなの簡単、誰でもできる!」と思っていても、実際は「あなただから簡単に思えるだけ」という事実に気づいていないことも多いのではないでしょうか。
教える側が教えられる側のプレッシャーを下げてあげよう
教える人と教えを乞う人の間には、多少なりとも権力勾配のようなものが存在しています。
もちろん、教える側が上で、教えを乞う側が下です。
教える側は無自覚でも、教えを乞う側は「できないことや、わからないことに対する劣等感」を抱えていることもあるはずです。
そういう状況下での「簡単ですよ」「誰でもできますよ」というセリフは、(教える側の意図に反して)教えを乞う側のプレッシャーを増大させる原因になるのではないかと僕は考えています。
教える側はむしろ、「これ、難しいですよね」「最初からできる人はいないと思いますよ」というように、「すぐにわからなくても大丈夫👌」という方向性の言葉をかけてあげる方が、教えを乞う側にとって救いになるのではないでしょうか(少なくとも僕だったらその方がありがたいです)。
技術記事を書くときも考え方は同じ
この考え方は僕が技術記事を書くときも同じです。
「難しい技術を優しく教える」系の技術記事では、「読者は⚪︎⚪︎のことをとても難しいと考えているはず」という前提で記事を書くようにしています。
もちろん、拙著「技術記事を書く技術」の説明も同様です。
記事執筆に関するノウハウやテクニックについて、15年選手の僕が「こんなの簡単」と思っていても、これから技術記事の執筆にチャレンジしようとしている人が同じように簡単と思えるはずがありません。
ですので、本の中では「とっても簡単です」とか「これは誰でもできます」といった言葉は極力使わないように意識しました*1。
むしろ「最初はなかなかできないはず」「全部できなくても大丈夫」というスタンスで記事執筆のノウハウを伝えるようにしています。
記事のテーマは自由です。なんでもいいから書いてみてください!……と言われても、多くの人は「ええっ」と困ってしまうと思います。アウトプットをしたくてもできないから本書を手に取ったのに、最初のアドバイスが「なんでもいいから書いてみて」ではあまりにも乱暴すぎますよね。
引用 「技術記事を書く技術」p24
コラム:「〜ってありますよね?」という言い方も避けたい
他にもよく似た説明パターンとして、「〜ってありますよね?」というセリフもなるべく避けた方がいいと思っています。
たとえば、「"OSI参照モデル"ってありますよね?あれでいうと〜」みたいな説明です。
この場合、「"OSI参照モデル"は当然あなたもご存知だと思いますが」という前提が暗に含まれています。
もし自分が「OSI参照モデル」をよく知らなかった場合、相手の説明をさえぎって「あの、すいません、"OSI参照モデル"って何ですか?」と追加で質問しないといけなくなります。
こうなると、説明を受けているだけでも「何も知らなくて申し訳ない」と思っているのに、さらに輪をかけて「"OSI参照モデル"すら知らなくて本当に申し訳ない」と萎縮してしまう原因になります。
また、その場で相手が「"OSI参照モデル"って何ですか?」で聞いてこなかった場合、
- 知っているから聞いてこなかった
- 知らないが恥ずかしくて聞けなかった
の2パターンが考えられます。
前者であれば問題ありませんが、後者の場合、頑張って説明しても自分の説明が相手にうまく伝わっていない恐れが出てきます。
ですので、「"OSI参照モデル"ってありますよね?(=当然あなたも知ってますよね)」ではなく、「"OSI参照モデル"ってご存知ですか?」というように、まずは相手の知識の有無を確認してから説明を進めるようにしましょう*2。
まとめ:簡単かどうかの判断は受け手に委ねよう
簡単かどうかは説明する側ではなく、説明を受けた側が判断することです。
説明する側は最初から「こんなの簡単」と断定せず、むしろその逆で「自分にとっては簡単でも、相手は難しいと感じるかもしれない」という前提で説明するようにしましょう。
