はじめに
昨日、イベント告知サイトのDoorkeeperが完全に有料化するという発表がありました。
有料化自体は全く否定しないのですが、料金プランが僕の利用形態にマッチしないのでDoorkeeperを利用し続けるべきかどうか迷っています。
このエントリではDoorkeeperから提示された料金プランが利用形態にマッチしない理由と、それに代わる別の料金プランの提案をします。
TL; TR(長いので最初に結論)
ちょっと長いので最初に結論を書いておきます。
このエントリで言いたいことは以下の通りです。
- 有料化はかまわない。自分はDoorkeeperの愛用者なので、料金を払う用意はある。
- ただし、最低でも「毎月1500円で最大5回」は、我々のように非営利で数ヶ月に一度しかイベントを開催しないコミュニティにとって高い。
- なので、定額制ではなくチケット制を用意してほしい。少なくとも僕はその方がありがたいし、サービス運営者としてもトータルでの収益は上がるのではないか。
- どうしても今の料金プランにこだわるなら、納得のいく説明がほしい。
その詳細を以下に書いていきます。
あんた誰?
僕は西脇.rbというRubyコミュニティを主催しているDoorkeeperユーザーです。
神戸市内や兵庫県内でときどきRubyの勉強会を開催しています。
これまで勉強会を開催するときは毎回Doorkeeperを使ってきました。
完全有料化すること自体は問題ない
僕はDoorkeeperの愛用者です。2013年からずっとDoorkeeperを使っています。
Doorkeeperの代表者であるポールさんと何度かお話ししたこともあって、Doorkeeperというサービスにはとても親近感を感じています。
昨日公開された「有料化する理由」の内容もとても誠実で、ポールさんの真面目な性格がよく表れていると思いました。
完全有料化が必要になる理由もよく理解できました。
いつもDoorkeeperを便利に使わせてもらっているので、無料でやっていけないのであれば、喜んで利用料を払うつもりです。
ですが、今回発表された料金プランはイベント主催者として非常に悩ましいものでした。
困っている点:我々は毎月5回もイベントを開催しない
公開された料金プランを見ると、最低でも毎月1500円の支払いが必要になります(スタータープラン)。
我々のような非営利のコミュニティにとっては、毎月定額の支払いをすること自体が大変ですし、1500円というのはかなり大きな額になります。(毎月1500円ということは、1年で1万8000円、消費税を含めると1万9440円です)
しかも、スタータープランでは開催予定イベント数の上限が5回になっていますが、我々は毎月5回もイベントを開催しません。
コミュニティをスタートさせた頃はだいたい月1回のペースで、最近では3~4ヶ月に1回のペースでイベントを開催しています。
たとえば、以下は今年(2016年)の勉強会開催数です。
今のところまだ3回しか勉強会を開催していません。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 |
1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 |
2015年は5回、2014年と2013年はそれぞれ9回でした。(参考:過去のイベント履歴)
こんな開催頻度なので、「毎月1500円で最大5回」というのはunreasonable(リーズナブルの逆)です。
提案:定額制ではなく、チケット制を導入してほしい
そこで僕が提案したいのは、利用料金を定額制ではなくチケット制にすることです。
たとえば、
- 1イベントを開催する場合は1チケットが必要になる
- 1チケットは500円で購入できる
- 10チケットをまとめ買いすれば4500円で購入できる
といった料金プランです。
もっと収益を増やしたいのであれば、
- チケットの有効期限は購入後半年とする
- 定員が20人以上のイベントは2チケット、30人以上であれば3チケット、というように定員に応じて必要なチケット枚数を増やす
といったオプションも考えられます。
これであれば少なくとも我々の活動スタイルにはマッチするので、喜んでDoorkeeperを使い続けることができます。
もし僕と同じように考えているイベント主催者が多ければ(つまり、Doorkeeperに残ってくれる主催者が多ければ)、「毎月1500円で最大5回」の定額制よりも収益が上がるかもしれません。
どうしても今の料金プランにこだわるなら、納得のいく説明がほしい
「定額制ではなく、チケット制が良い」というのはあくまで僕個人の一意見です。
サービス運営者の観点ではチケット制ではなく定額制にするもっともな理由があるのかもしれません。
(実は毎月何度もイベントを開催する主催者が主流で、我々のような開催頻度のコミュニティの方が少数派だとか、非営利団体よりも企業や営利団体向けのイベント告知サイトを目指しているとか)
せっかくあそこまで真摯で誠実なコメントを出してもらったのだから、
- なぜ定額制しか用意していないのか
- なぜ最低ラインが「毎月1500円で最大5回」になるのか(「毎月300円で最大1回」があってもいいのでは?)
といった点も説明してもらいたいです。
もちろん、僕がイベントごとに毎回500円を払うよりも、毎月1500円を払う方がサービス運営者としては収益が上がるでしょうが、僕が「Doorkeeperを使い続けるのは無理だ」と思ったら収益はゼロです。
もし僕と同じように考える人が多ければ、薄利多売でもトータルで見ると収益は上がるかもしれません。
ただ、このあたりはサービス運営者でないと傾向がわからないと思うので、「最低でも毎月1500円で最大5回がベスト」と結論付けた理由が知りたいです。
まとめ
というわけで、Doorkeeperの新しい料金プランについて、個人的に思うところをいろいろと書いてみました。
ざっくりまとめると、
- 有料化はかまわない。自分はDoorkeeperの愛用者なので、料金を払う用意はある。
- ただし、最低でも「毎月1500円で最大5回」は、我々のように非営利で数ヶ月に一度しかイベントを開催しないコミュニティにとって高い。
- なので、定額制ではなくチケット制を用意してほしい。少なくとも僕はその方がありがたいし、サービス運営者としてもトータルでの収益は上がるのではないか。
- どうしても今の料金プランにこだわるなら、納得のいく説明がほしい。
ということです。
サービス運営者としてのポールさんの見解をお待ちしています。
2016.7.26 21:00追記:ポールさんからのコメント(日本語訳)
Facebookグループの「Doorkeeper.jp 友の会」にて、ポールさんからこの件について英語でコメントをもらいました。
すぐに日本語に翻訳する時間が取れないとのことなので、ポールさんの許可をもらって僕が翻訳した内容をこちらに掲載します。
(ポールさんいわく、「できるだけオープンにしたいので、ぜひシェアしてください」とのことです)
原文はFacebookアカウントを持っていればこちらで読めます。
https://www.facebook.com/groups/1541181422773074/permalink/2041972676027277/
Facebookアカウントを持っていない方はこちらのgistページをご覧ください。
https://gist.github.com/JunichiIto/ede7727d4cdbe5b27289780a84fc8c26
それでは以下が僕の翻訳です。
ところどころ意訳していますが、全く違った意味になっている部分があればコメント等でご指摘ください。
あなたのコメントと応援に感謝します!なぜこの料金プランを選んだのかもっとちゃんと説明すべきでしたね。
Doorkeeperに関していうと、我々は定期的にイベントを開催する主催者にフォーカスしています。単発のイベントを開催する主催者ではありません。
これが開催ごとではなく、月額固定の料金プランを選んだ理由です。
Doorkeeperはあなたがイベントを開いていなくても、いくらかの価値は提供していると思いますし(たとえば新しいメンバーがコミュニティに参加したり、メンバーにメッセージを送ったりできますよね)、もっと継続的な価値をコミュニティに届けていきたいと思っています。
もしあなたがイベントを開催していないときでも、Doorkeeperがもっと価値を提供できるようなアイデアがあれば、ぜひ教えてください。
最小のプランで開催予定イベント数を5つに設定した理由は、それが非プロフェッショナルな主催者が開催するイベントの最大件数だと考えたからです。
たとえもし、あなたが1ヶ月に1回しかイベントを開催しなかったとしても、毎月1500円という額は妥当な料金だと我々は考えています。
もっと安いプランを機能させるためには、Doorkeeperはもっと大きくスケールする必要があります。
私たちがちゃんと説明できていないかもしれないポイントの一つは、コミュニティ主催者の誰か一人が料金を払えばよい、ということです。
西脇.rb&神戸.rbが数ヶ月に一度しかイベントを開催しなかったとしても、主催者の方(訳注: おそらく共同主催者のAkiさんのこと)は他のコミュニティを管理しています。
トータルしてみれば、Akiさんは開催予定イベントを3件持っています。なので、月額1500円を複数のコミュニティで割り勘できると考えれば、この料金はよりリーズナブルになると思います。
それでも高すぎるのであれば、自分の会社にスポンサーになってもらい、Doorkeeperの料金を払ってもらうように働きかけるのはどうでしょうか。ビジネスレベルの出費としてみれば、月額1500円は大変小さな額です。
あなたの考えを聞かせてください。私はあなたがDoorkeeperを使い続けられるような方法を探していきたいです。
ポールさんからのコメントは以上です。
このポールさんのコメントに対する僕の返信はまた後ほど書きたいと思います。
2016.7.27 9:00追記:僕からの返信
ポールさんのコメントの要点を僕なりに抜き出すとこんな感じになります。
- Doorkeeperは定期的にイベントを開催する主催者にフォーカスしている。なので定額制を選んだ。
- イベントを開催していなくても価値は提供しているはずだ。
- 1ヶ月に1回しかイベントを開催しなくても月額1500円は妥当な金額だと考えている。
- もっと安いプランを用意するなら、サービスをもっとスケールさせる必要がある。
- 複数のコミュニティを掛け持ちしている主催者がいれば、コミュニティ間で利用料を割り勘することもできる。
- 自分の会社にスポンサーになってもらう方法もある。
結論としては「チケット制を導入する予定は今のところない」ということみたいです(残念ながら)。
続いて、それぞれの要点に対してコメントを付けていきます。
「Doorkeeperは定期的にイベントを開催する主催者にフォーカスしている。なので定額制を選んだ」
西脇.rbの場合、最近は定期的といえるほど頻繁には勉強会を開催していないので、フォーカスからは少し外れてしまいますね。
「イベントを開催していなくても価値は提供しているはずだ」
自分にとってのDoorkeeperの一番の目玉機能は「イベントを告知できる」「イベントの参加者を管理できる」というところなので、それに比べるとイベントを開催していない間の価値は(全くないわけではないが)正直なところ小さいと思います。
「1ヶ月に1回しかイベントを開催しなくても月額1500円は妥当な金額だと考えている」
今まで無料で使えていたサービスが突然1500円に値上がりするというのは、僕の感覚からするとかなりの飛躍があります。
また他の有料サービスと比較しても、最近有料化したEvernoteプラスで月額360円、このブログを書いている「はてなブログPro」も月額1008円なので、それに比べると月額1500円は高額な部類に入ると思います。
(ちなみに僕はEvernoteにもはてなブログにも課金していますし、頻繁に使っています)
ですが、サービス提供者が「1500円は妥当」と考えるのであれば、我々はそれを拒否することはできません。
その額を毎月支払うか、サービスの利用をやめるかのどちらかになります。
「もっと安いプランを用意するなら、サービスをもっとスケールさせる必要がある」
これもビジネス上の判断ですので、そう言われてしまうと我々からはそれ以上強く言うことはできません。
「複数のコミュニティを掛け持ちしている主催者がいれば、コミュニティ間で利用料を割り勘することもできる」
このオプションがあることは僕も予想していました。
たしかに、西脇.rbには「掛け持ち主催者」がいるので、複数のコミュニティで割り勘することはできます。
実際、西脇.rbはこのオプションを使ってDoorkeeperの利用を継続していくつもりです。
とはいえ、完全に一人でやっているコミュニティも多いと思うので、その人たちのことを考えると手放しでは喜べず、複雑な気持ちになります。
また、「お金の話」は往々にしてデリケートな問題なので、よっぽど信頼し合える関係にないと、何かあったときに深刻なトラブルに発展してしまう懸念もあります。
「自分の会社にスポンサーになってもらう方法もある」
もちろん、選択肢の一つとしてはあり得ますが、社員の社外活動を積極的に支援する会社でない限り、ちょっとハードルが高い気がします。
返信のまとめ
西脇.rbに関していえば、先ほども述べたとおり「コミュニティ割り勘」で利用を継続していく予定です。
ですが、もし仮に僕が完全に一人で西脇.rbを主催していたら、Doorkeeperを利用し続けるのはおそらく難しいと思います。
ポールさんのコメントを読むと、Doorkeeperは今後中級者から上級者向けのイベント告知サービスになっていくのかな、という気がします。
ここでいう中級者~上級者というのは、毎週(最低でも毎月)のように勉強会を自分で開いたり、複数のコミュニティを掛け持ちして運営に関わっていたりするような人たちのことです。もしくは完全に企業としてイベントを開く人たちとか。
「初めて自分で勉強会を開催してみたい」「単発のイベントを開いて人を集めたい」という人は、別のサービスを利用せざるを得ないのでは?というのが僕の感想です。(主催者の工夫や努力でDoorkeeperで何とかできる可能性もありますが)
もちろん、これはDoorkeeper株式会社としてのビジネス上の判断ですから、外野にいる我々としてはそれを受け入れざるを得ません。
これまでの無料で便利で気軽に使えていたDoorkeeperがなくなってしまうのは残念ですが、なぜこの判断に至ったのか、そしてどういうユーザーをターゲットにしてサービスを発展させていこうとしているのかが明確になったのは良かったです。
あ、なんか「これでお別れ」みたいな文章を書いていますが、西脇.rbは引き続きDoorkeeperを使っていくので、どうぞよろしくお願いします!(苦笑)
2016.7.28 21:00追記:スポンサー活動が一部で始まっているようです
「勉強会をDoorkeeperで告知したいけど毎月1500円を払うのは厳しい」という主催者さんのために、有志の方々が条件付きでスポンサーになってくれる活動が始まっています。
沖縄のIT系コミュニティ ( #okinawarb など) を主な対象として、Doorkeeper スポンサーを始めました!
— Yohei Yasukawa (@yasulab) July 28, 2016
「Doorkeeper有料化したのでどうしよう」とお悩みの主催者の方がいたら、お気軽にご連絡ください!https://t.co/DnS8hgoKUe
【Co-Edoで勉強会を開催している主催者の方へ】
田中 弘治 - 【Co-Edoで勉強会を開催している主催者の方へ】 昨日... | Facebook
昨日 Doorkeeperの運営者とお話し、わたしの感じていることを伝えました。
それとは別に「Co-Edoプラン」のようなものを提供しようと検討しています。Doorkeeperを無料利用(Co-Edoの契約枠で利用)できるようにするものです。条件はこれからですが「3ヶ月に1度以上、Co-Edoの利用料のみの勉強会をCo-Edoで開催するコミュニティ運営者」のようなゆるい感じで考えています。(この条件を満たしていれば、Co-Edo以外の場所を併用するのも自由/このアイディアについてはPaulさんに確認済です)
いずれも詳細はこれから決めていくようですが、今後は地域や技術分野ごとにこうした動きが増えてくるかもしれませんね。
個人的にはとても良いと思います。
2016.8.3 19:00追記:コワーキングスペース茅場町 Co-Edoさんのサポートプランについて
コワーキングスペース茅場町 Co-Edoさんから「Co-Edoプラン for Doorkeeper」というコミュニティ向けのサポートプランが発表されました。
このプランは「3ヶ月に1度以上、Co-Edoの利用料(1,000円)のみの勉強会をCo-Edoで開催するコミュニティ運営者であれば、無料でDoorkeeperを使い続けられる」というプランだそうです。
詳しい内容はこちらのブログに経緯や思いを含めて掲載されています。
興味のある方はぜひチェックしてみてください。
コワーキングスペース茅場町 Co-Edo: Doorkeeperを使用しているコミュニティの主催者をCo-Edoが支援します
2016.8.10 19:30追記:YassLab さんの「Doorkeeper スポンサーシップ」について
YassLabさんの「Doorkeeper スポンサーシップ」も公開されました。
以下のコミュニティのスポンサーを優先的に行うそうですが、枠が余ればそれ以外のコミュニティもサポートできるかも、とのことです。
- 沖縄のIT系コミュニティ
- CoderDojo コミュニティ
- YassLabさんが関わっているコミュニティ
詳しくは下記ページをご覧ください。
2016.8.10 19:30追記:JJUG さんのJavaコミュニティ支援について
日本Javaユーザーグループ(JJUG)さんもDoorkeeperの利用者を支援する取り組みを始められているそうです。
参加資格は以下の通りですので、Java関連のコミュニティは利用を検討されてみてはいかがでしょうか?
- 日本国内での活動を中心としているコミュニティ
- 公式JUG(Java User Group)
- 公式JUGを目指す団体、もしくは、それに該当するJavaコミュニティ
- JavaVM上で稼働する言語、フレームワークなどのコミュニティ
詳細は下記ページをご覧ください。
2016.8.24 追記:Doorkeeperのニュースが更新されています
2016年8月22日にDoorkeeperのニュースページが更新され、完全有料化の発表から1ヶ月経った現在の状況や、今回の新料金プランに決まった背景等が説明されています。
こちらもあわせてご覧ください。