はじめに:PTA会長、祝辞に悩むの巻
昨日は息子の卒業式でした。
僕は今年PTA会長をやっているので、保護者としてではなく、来賓として出席しました。
こういうイベントでやってくるのが、「PTA会長の祝辞」です。
学校側はサンプルとして過去の祝辞をいくつか渡してくれたものの、自分で祝辞を考えるのはなかなか大変でした。
まず、「どこかで聞いたことのあるような平凡な祝辞」はしゃべりたくない。
あと、きれいな言葉が並んでるんだけど、抽象的で具体性のない祝辞もイヤ(「君たちには無限の未来が広がっています」「どんな困難も諦めずに乗り越えていってください」「いつも夢と希望を持って~」みたいなやつです)。
子どもの立場に立ってみると、祝辞って大半が「退屈なおっさんの話」なんですよね。
僕自身、まったく記憶や印象に残っていません。
なので、「ちょっと変わってて」「具体的で」「多少なりとも印象に残るような」祝辞を話したいなーと思いました。
偉そうな祝辞もボツ、苦しむこと数時間、そして・・・
最初は「将来役に立つ人生のテクニック」みたいなことを話そうかなと思いました。
で、最初のひとことふたことを書き始めたのですが・・・あかん!すごく上から目線で偉そうになってしまう!!
子どもたちにしてみたら「おっさんの偉そうな話」もイヤですよねえ💧
というわけで、その案もボツになり、「あ~もう、何を書こうかな~???」と頭を抱えていました。
何か参考になる情報はないかと、経験者のブログ記事やYouTubeにアップされている「PTA会長の祝辞動画」を見たりするのですが、なかなか「おお、これは!」と思うような事例が見つかりません。
うーん、うーんと唸りながら、かれこれ数時間が経過した頃、とあるYouTubeの動画でこんなセリフがちらっと聞こえました。
「~のみなさん、ありがとうございました。子どもたちもありがとう。そして、お世話になった~」
そのセリフを聞いて「ん、子どもたちにもありがとう?あ、この視点はなかなか面白いかも!」と思い、一気に原稿を書き上げました。
というわけで、今回僕がしゃべったのはこんな祝辞です。
お祝いの言葉
本日の卒業式にあたり、保護者を代表いたしまして、一言お祝いの言葉を申し上げます。卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。また、保護者のみなさまも、本日はお子様のご卒業おめでとうございます。
ご来賓のみなさま、本日はお忙しい中、ご臨席たまわりましてどうもありがとうございます。保護者を代表して心よりお礼申し上げます。
そして、校長先生をはじめ、諸先生方には子どもたちを優しく、時には厳しくご指導いただき、本当にありがとうございました。先生方のおかげで、こうして本日無事に卒業式を迎えることができました。心より感謝いたしております。
さて、今日は感謝というテーマで少し話をさせてください。
卒業生のみなさん。みなさんは周りの大人から、「今まで育ててくれたお父さんやお母さんに感謝しなさい」「指導してくださっている先生方に感謝しなさい」と言われたりしていませんか?もちろん、保護者の方や先生方に感謝をすることはとても大事なことです。しっかり感謝の気持ちを伝えてください。
ただ、その一方で、これは僕個人の意見なのですが、「親だから偉いんじゃない、大人だから偉いんじゃない、どっちが偉いとかじゃなく、大人も子どもも対等な人間だ」そんなふうに僕は考えています。また、大人は子どもに対してああしろ、こうしろ、と口で言うだけでなく、子どものお手本として、自分がやっている姿を子どもに見せて教えることも大事だと考えています。
そう考えたとき、僕はふと思いました。感謝するのは子どもだけなのでしょうか。我々保護者も子どもたちに対して、「生まれてきてくれてありがとう」「ここまで元気に育ってくれてありがとう」と、感謝の気持ちを伝える必要があるのではないでしょうか。
なので今日は僕から、保護者を代表して、卒業生のみなさんに言わせてください。
「ここまで元気に育ってくれてありがとう。僕たち大人はきみたちが成長していく姿を見るのが大好きです。これからも僕たち大人をワクワクさせてください。きみたちが将来、立派な大人になって活躍してくれることを、心から期待しています。」
そして、今日は保護者のみなさんもぜひ、ご自身の口から、お子さんたちに感謝の気持ちを伝えてあげてください。ありがとうの言葉だけでなく、お子さんの大好きなところや、偉いところもぜひほめてあげてください。僕もこのあと帰ったら、がんばって息子に伝えます。
というわけで、今日は感謝というテーマでお話をさせてもらいました。僕からの話は以上です。卒業生のみなさん、保護者のみなさん、本日はご卒業おめでとうございます!
平成30年 3月22日
〇〇小学校PTA会長 伊藤淳一
祝辞の反応
当日は他の来賓の方も何名か祝辞を述べる中、僕の祝辞だけ明らかに浮いていたので「ヤバい、完全に空気読んでない感じ?」と思いましたが(いや、あえてその路線を選んだのは僕自身なんですけど)、意外と子どもにも保護者にも好評だったようです。
子どもたちはニコニコしながら聞いてくれているのがよくわかりましたし、息子いわく「お父さんの話が一番良かったって友達が言ってた」とのことです。
保護者の方からも「この祝辞を聞くまで涙が出るようなシーンはなかったけど、これを聞いたら涙が出てきた」という話を何人かから聞きました(妻経由で)。
伝わる人にはちゃんと伝わったようで、ひとまずほっとしました😄
この祝辞の裏テーマ
ところで、この祝辞には実はちょっとした隠れたテーマがあります。
それは「すべての子どもが親に感謝をしているとは限らない」「すべての子どもが親から感謝されるとは限らない」という僕の推測です。
今回の卒業式では125名の児童が卒業したのですが、百数十も家庭があれば、親子関係が良好とは言えないご家庭もたぶんいくつかあると思います。
また、最近児童虐待を扱ったこんな本が話題になっていたので、その気持ちがより強くなっています。
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もし親子関係が良好でなかったら、そんな状況下で子どもから親へ「一方的に」感謝の気持ちを述べさせるのはかなり酷だと思います。
また、祝辞の中では「保護者の方からもお子さんに感謝の気持ちを伝えてください」と述べましたが、親子関係が良好でなかったら、親から子どもへ感謝の言葉が出てくる可能性もかなり低いんじゃないでしょうか。
ご家庭によってはそんなケースがあるかもしれないので、今回は「子どもだけが大人に感謝するのは変だよね」「もしかしたら、あなたのお父さんやお母さんはありがとうって言ってくれないかもしれないけど、僕は保護者の代表としてあなたにありがとうって言うよ」と思いながら、祝辞の内容を考えました。
たかが祝辞ひとつで考えすぎかもしれませんが、そんなメッセージも多少含まれたりしています。
まとめ
というわけで、このエントリでは僕がPTA会長として述べた祝辞を紹介してみました。
みなさんも、もしPTA会長になる機会があれば(あまりないと思うけどw)、このエントリを参考にしてみてください。
何はともあれ、息子は大きな怪我や病気をすることもなく6年間無事に通学してくれたので良かったです。
勉強や友達関係は今のところ順調っぽいので、中学校もこの調子でがんばってほしいです。
息子よ、卒業おめでとう!
おまけ:家に帰ってからの話
祝辞の中で「僕も帰ったら息子に感謝の気持ちを伝えます」と言ったのを息子がしっかり覚えていて(そりゃそうだ)、息子から「さあ、感謝の気持ちを伝えてもらおうか!」と詰め寄られました(苦笑)。
いやあ、実際に息子本人を目の前にして「何か感謝の言葉を伝えろ」と言われると、結構しどろもどろになっちゃいますね~💦
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地元の中学生の前で講演したこともあります。
これも内容を考えるのにすごく苦労しましたが、結果的にはとても好評でした😄