はじめに
このエントリは『どんな「情報モラル/リテラシー」啓発をしたい・聞きたい? Advent Calendar 2018』の11日目の投稿です。昨日、10日目の記事は id:riz-nishibata さんの『時短で楽しく美味しい「合わせ調味料」のような「情報処理演習」でありたい。』でした。
さて、このアドベントカレンダーでは情報モラル教育の講師を実際にされている方の投稿が多いですが、僕自身はWebプログラマではあるものの、情報モラル教育の講師ではありません。
しかし、情報モラル教育には非常に興味を持っています。
なぜなら、(この界隈の方はすでにご存じかもしれませんが)以前、息子が通う中学校で開催された情報モラル教育講演会の内容に(悪い意味での)強い衝撃を受けたからです。
それ以来、「情報モラル教育を学校任せにしてはいけない。保護者として未来を担う子どもたちに、より適切な情報モラル教育を受けさせるにはどうすれば良いだろうか」ということを考えたりしています。
その一環として、少し前になりますが、2018年8月に大阪で開催された「e-ネットキャラバン講師認定講習会」を受講してきました。
このエントリでは講習会の様子や、講習会を受けて感じたことをあれこれ書いてみようと思います。
講習会の申込みについて
「e-ネットキャラバン講師認定講習会」は僕が知る限り、開催予定がネット等に公開されていません。
僕は知り合いの id:hanazukin さんから開催予定を教えてもらい、メールで申し込みました。
講習会を受講すると、講師向けのメルマガに講習会の開催予定が掲載されるので、そこで予定を把握できるます。
しかし、講師のツテがない人は開催予定を知る手段がないので(事務局に問い合わせるぐらいか?)、もう少しオープンにしてもいいんじゃないかと思います。
講習会の概要
僕が受講した講習会は全部で3時間ありました。
そのうちの2時間半はマルチメディア振興センターの専任講師による、講座ガイダンスと模擬講座です。
このガイダンスと講座では、専任講師の方がスライドを使いながら、講座の内容やポイントを詳しく説明してくれます。
この講習会は基本的に座学を受講すればおしまいです。試験等はありません。
講習会を受講すれば、誰でも認定講師の肩書きがもらえます。
受講する側としては話を聞くだけで肩書きがもらえるので、ありがたいと言えばありがたいのですが、基本的に座学の受講しかないので、僕自身を含めて「認定講師」となった人の講師スキルは、千差万別になりそうな予感がしました。
(講師専用ページにアクセスすると各種資料をダウンロードしたり、講演内容について事務局に相談したりはできますが、それでも講師の質は本人の工夫や努力に強く依存しそうな気がします)
e-ネットキャラバンで使用するカリキュラムについて
e-ネットキャラバンで使用するカリキュラム(主にスライド)は、浅く広く、情報モラルに関する様々なトピックをカバーしています。
また、僕が以前出席した中学校の情報モラル教育講演会のように、思わず眉をひそめるような内容もありませんでした。
よく言えば、非常にバランスが取れたカリキュラムだと言えます。
その一方で、悪く言うなら「無難すぎる」印象もあります。
とはいえ、元は総務省が母体となっている団体なので、無難なカリキュラムになってしまうのは致し方がないところかな、とも思います。
(むしろ思ったよりも頑張っていると言えるのかも?)
講習会の参加者層について
僕が参加した大阪の講習会ではおそらく200人ぐらいの人が受講者として出席していました。
僕は勝手に「たぶん10人ぐらい、多くても20人ぐらいじゃないか」と予想していたので、予想以上にたくさんの人が受講していることにビックリしました。
受講している人の性別や年代は様々です。
OL風の若い女性の方もいましたし、もうすぐ還暦?と思うような白髪の男性も見かけました。
あとから聞いた話では、企業単位で会社から受講してくるように言われて参加している人が多いそうです。
また、必ずしも講師になるのが目的ではなく、本人が情報モラルについて勉強する目的で参加している人も中にはいるそうです。
たしかに、この講習会を受講すれば、(そんな目的で受講することの是非はさておき)それだけで本人にとって「良い情報モラル教育」になりそうな気はします。
講習会を受けて、実際に講師をするまで
前述の通り、この講習会を受講すればe-ネットキャラバンの認定講師にはなれます。
その後、どのタイミングで実際に講師をするのかという点については、基本的に「事務局からの連絡を待つ」ということになります。
申込みの際に、講師として移動可能な地域を申請するので、これに従って事務局が講演依頼をしてきた団体の地域とマッチングし、うまくマッチした講師に講演依頼の連絡を入れる仕組みになっているそうです。
僕は兵庫県西脇市という田舎町に住んでいるせいか、今のところ講演依頼の連絡は受けていません。
e-ネットキャラバンに講演依頼を申し込む際に、どの講師がいいか指名することはできるそうなので、とりあえず息子が通う中学校の先生には「e-ネットキャラバンの認定講師になったので、ぜひ申し込んでください!」とは伝えておきました。
はてさて、僕の初登板はいったい、いつ、どの学校(どの団体)になるのやら・・・??
講師の報酬と、企業のCSR活動という考え方
e-ネットキャラバンの講師には報酬は一切支払われません。
交通費も支払われません。
e-ネットキャラバンは一般企業のCSR活動(Corporate Social Responsibility、一種の社会貢献活動)として、企業の善意で講師を派遣してもらうことを前提としているようです。
(なので、個人で参加しようとすると、完全自腹のボランティア活動になってしまいます)
その他、情報モラル教育について感じていること
前にも述べたとおり、e-ネットキャラバンのカリキュラムは「普通に良い」ものだと思いますが、無難で地味なところがあります。
一方、僕が息子の通う中学校で聞いてきた「専門業者の情報モラル教育」は非常に派手で、なおかつインパクトがあり、(良くも悪くも)子どもや保護者のウケが良いです。
講師も場数を踏んだ熟練講師なので、話の運び方や子どものハートのつかみ方もビックリするぐらい上手です。
子どもたちが喜ぶ最新ゲームや人気YouTuberの話題も、いち早くキャッチして講演に盛り込んできます。
ですが、聴衆のウケやインパクトを求めるあまり(?)、正しくない情報を話したり、不必要に恐怖を煽ったりするような講演になることがあります。
理想と現実の狭間で自分にできることは何か
理想はもちろん、「話がうまくて子どもや保護者が最後まで飽きず、なおかつ情報モラル教育としても適切で正しい内容になっていること」ですが、そんなことができる講師はおそらく一握りだと思います。
じゃあどうしたらいいの?と聞かれると、僕はこれという回答を持ち合わせていません。
日本全体の情報モラル教育をどうしていけば良いかというテーマは、専門家でない僕にとっては少し大きすぎます。
なので最低限、「自分の身の回りからできること」をちゃんとしようと心がけています。
具体的には、
- 日常的に自分の子どもたちとスマホやネットの適切な使い方について話合う
- 情報モラル教育に関して、普段からアンテナを張る
- 今回のe-ネットキャラバン認定講師のように、情報モラル教育に関して自分ができそうなことをちょっとずつやる
- 良い講師、悪い講師に関する情報をできるだけ周りの人(=知人や学校)と共有し合う
といった内容です。
少なくとも、「情報モラル教育は全部学校任せ、きっとちゃんと教えてくれるはず」という考え方では、きっと何もうまくいかないことだけは確信しています。
まとめ
というわけで、このエントリではe-ネットキャラバン講師認定講習会を受講して、僕が思ったことをあれこれ書いてみました。
講習会の内容についてはいくつかネガティブな評価が並んでしまいましたが、情報モラル教育を求める学校や団体が日本全国にある以上、「ハイスキルな少数精鋭の講師」ではなく、「平均的なスキルを持った大量の講師」を生み出すための講習会になってしまうことは、ある意味仕方がないことだと考えています。
ですので、e-ネットキャラバンについて初めて知った方も、その点を考慮した上でこのエントリを読んでいただければと思います。
最後に、僕のブログの読者さんは情報モラル教育の専門家よりも、僕と同じITエンジニアの方が多いと思います。
僕たちITエンジニアは一般の保護者のみなさんよりもITに関する知識が豊富であることは間違いないので、情報モラル教育に関してできることはたくさんあるはずです。
小さなお子さんがいるパパ・ママITエンジニアのみなさんは「学校任せにしない、積極的に関わる情報モラル教育」を意識していきましょう!
それでは明日以降の『どんな「情報モラル/リテラシー」啓発をしたい・聞きたい? Advent Calendar 2018』もお楽しみに🎄