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【書評】SOFT SKILLSを読んでプログラマとしてのキャリア設計を見直そう

(2022.3.17追記)第2版が出版されたので、こちらで第2版の書評を公開しています。
blog.jnito.com

以下は第1版の書評です。

はじめに

先日、最近ネットでちょくちょく名前を見かける「SOFT SKILLS」という本を読み終わりました。

Amazonのレビューを見てるとなんか冷めた意見が多くて「イマイチなのかな?」と思ったんですが、実際読んでみると全然そんなことはなく、「これは面白い!」と思える久々のヒット作でした。

というわけで、このエントリではSOFT SKILLSに関する僕なりの書評を書いてみようと思います。

SOFT SKILLSってどんな本?

この本のサブタイトルは「ソフトウェア開発者の人生マニュアル」です。
このサブタイトル通り、プログラマとしてどうやって出世していくか、どうやって収入を上げていくか、どうやって幸せなプログラマ人生を送るか、というライフハックの方法が筆者の経験に基づいて解説されています。
一般向けのライフハックではなく、あくまで技術者向けに特化しているのがこの本の大きな特徴です。

筆者のジョン・ソンメズ氏ってどんな人?

筆者のジョン・ソンメズ(John Sonmez)氏は主に.NET系のプログラマとして活躍してきた人のようです。
現在はソフトウェアを開発するだけでなく、オンライン教材の制作やプログラマのキャリア形成をサポートするブログの執筆、ポッドキャストの配信、コンサルティング等々、様々なビジネスに手を伸ばしているそうです。

また、技術系の仕事だけでなく不動産投資も長年行っていて、現在はその利益で毎月働かなくても食べていけるレベルの収入(具体的には毎月5000ドル=約50万円以上)を得ているとのことです。
なので、筆者は事実上の「早期引退(アーリーリタイア)」状態ですが、別に毎日遊んで暮らしているわけではありません。
今でも働いてはいるのですが、早期引退後は食べるために働くのではなく、自分のために自由に働く、という働き方に変わっているみたいです。

本の感想

この本は全部で以下の7パートに分かれています。

第1部 キャリアを築こう
第2部 自分を売り込め!
第3部 学ぶことを学ぼう
第4部 生産性を高めよう
第5部 お金に強くなろう
第6部 やっぱり、体が大事
第7部 負けない心を鍛えよう

各パートの感想を簡単に述べていきます。

第1部・第2部:すっごく共感

この本は「うんうん、そうだよね~」と共感する内容がたくさんありました。
特に最初の「キャリアを築こう」と「自分を売り込め!」は、「全くその通り!僕もそう考えて行動してるわ~」と思う部分が多かったです。

これらの章では雇用形態の違いやそれぞれの特徴、セルフマーケティングの各種手法等が説明されています。
特にブログの執筆やTwitterでの情報発信のあたりは僕の考え方とほぼ一致していました。

「伊藤さんってなんでしょっちゅうブログ書いたりしてんだろ?」って思う人は、この本を読んでみてください。
たぶん、答えが書いてあります(笑)。

第3部:僕の知らない新技術の独学法

第3部の「学ぶことを学ぼう」では、筆者の実践している新技術の学び方が載っています。
ここは共感するというよりも、「なるほど、こういうアプローチの仕方もあるのか」と勉強になるパートでした。
僕の場合は筆者のように何か確固たるアプローチを持っているわけではないので。

第4部:僕だけじゃなかったw

第4部の「生産性を高めよう」はちょっと耳が痛いパートですね。
SNSの誘惑やスマホの通知からいかに逃れて集中力、生産力を高めるか?という話題が書かれています。

とはいえ、「すごい裏ワザ」や「誰も知らなかった銀の弾丸」が書かれているわけでなく、筆者自身もSNSやスマホの通知には心を動かされやすい、ということを認めています。
この点は「ああ、良かった。僕だけじゃなかったんだ」と、ちょっと安心してしまいました(苦笑)。

第5部:お金、増やしたい・・・

第5部の「お金に強くなろう」は資産運用の話がメインで、完全に僕の未経験分野です。
というか、プログラマで株や不動産投資にがっつり入れ込んでる人ってかなり少ない気がするんですが、実際どうなんでしょう?

ですが、僕もその昔「金持ち父さん 貧乏父さん」を読んで、サラリーマンだけをやっててもお金持ちにはなれない、ということは理解しています。
そのために資産運用が大事なのも分かります。
分かってはいるけど、いざ動くのはなかなか腰が重いです・・・。

第6部:運動しないとたぶん死ぬ

第6部の「やっぱり、体が大事」では体を鍛える重要性や、具体的な方法が解説されています。
ちょっと前の僕だとこれを読んでも「運動嫌い!運動したくない!」だったと思うんですが、最近は「ヤバい、運動しないとたぶん死ぬ」と思っているので、結構共感できるパートです(笑)。

30前半ぐらいまではね、運動しなくてもあんまり心配はいらないんですよ。
でも、40が近づいてくるとヤバい。
健康診断の数値も徐々に悪くなってくるし、運動不足は心臓麻痺や脳卒中のリスクに直結しそうな予感がしてきます。

というわけで、最近は僕も意識的に運動や筋トレをしたりするようにしています。
(そのへんの話はこのブログでまたいずれ)

運動の話はこちらのエントリに書きました。

第7部:けっこう同じ本を読んでた

第7部の「負けない心を鍛えよう」はメンタルに関する話です。
僕の場合、この章はメンタルのそのものの話よりも「私の成功本リスト(第69章)」が興味深かったですね。
このリストの中には僕も過去に読んで強く印象に残っている、以下の本が含まれていました。

この本で共感する部分が多いのは、いくつか筆者と同じ本を読んでいるせいなのかもしれません。
特に「人を動かす」で書かれていたアプローチは本書の中でもしっかり反映されているな、と読んでいて思います。

一番印象に残った部分:筆者の半生

この本を読んで一番印象に残ったのは第5部の「私が33歳で引退できた理由(第55章)」です。
ここでは20歳頃から33歳で早期引退するまでの筆者の半生が詳しく描かれています。

しっかり頭を使って目標を立てているし、そのための努力もちゃんとしてるし、ときには苦労もしてるし、「そりゃ、成功する確率も上がるよな」と思う内容でした。
見習うべきところはしっかり見習っていきたいです。

全般を通して良いところ:難しいことは難しいと認めているところ

この本の良いところは「なんでこれぐらいのこともできないの?」というマッチョなスタンスではなく、「自分が完璧でないのと同様、あなたもきっと完璧ではない」「難しいことは難しい」というスタンスで書いてある点です。

前述の「SNSやスマホの通知には筆者も心を動かされやすい」という部分をはじめ、「自分も苦労している」「自分も大変だった」というふうに読者の立場に寄り添ってくれる点は、読んでいてちょっと安心感を得られます。

私見:1から10まで賛同する必要はない

SOFT SKILLSに関する他の書評でときどき見かけるのが「不動産投資の話はいらなかった」「筋肉とエンジニアは関係ない」みたいな感想です。
しかし、別に1から10まで賛同できなければ、本の価値がないというわけではありません。
本書を読んだ各自が自分に役立ちそうなところだけをピックアップして実践すれば良いだけのことです。

同じような話は「金持ち父さん 貧乏父さん」にもあって、「あの本は最後に自分の会社の商品を売りつけてくるから怪しい。だからダメ」という意見をよく見かけます。
しかし僕の場合、あの本は「なるほど、世の中にはバイトする、企業に就職する、以外にもお金を稼ぐ方法があるのか」と気づかせてくれたのでとても有益でした。

こんな感じで、ライフハックや自己啓発系の本は1から10まで賛同できなくても「自分の視野がちょっとでも広がれば儲けもん」という気持ちで読み進めるのがいいと思います。

その他:洋書ではなく翻訳版を買った方がいい

この本は海外で出版された本なのでオリジナルの洋書を買って読むこともできます。
しかし、普段から英語の技術書を読んでいる人もこの本は翻訳版を買った方がいいかもしれません。
というのも、金融、不動産に関する用語や筋肉の名前など、普通の技術書ではあまり出てこない単語がたくさん出てくるからです。
(課税繰延年金口座や上腕二頭筋という英単語を知ってる技術者は滅多にいないはず)

なので、普段技術書の英語をメインで読んでいる人は畑違いの単語を調べるのに結構苦労しそうな気がします。
翻訳版を買って、翻訳された日本語をありがたく読ませてもらいましょう。

もちろん、技術書以外の英文もスラスラ読めるようになりたい!と考えている方はこの限りではありません。

まとめ

というわけで、今回はSOFT SKILLSを読んだ感想をあれこれ書いてみました。
技術者として頑張ってるつもりだけど、なかなか報われなくてモヤモヤしている人にはオススメの一冊です。

アメリカのソフトウェア業界が本書のバックグラウンドですが、基本的な考え方は日本でも十分通用すると思います。(日本人の僕も同じように考えているわけですし)
この本を読んで行動を起こせば、数年後にあなたの人生が好転しているかもしれませんよ?

あわせて読みたい

ジョン・ソンメズ氏のインタビューが載っている記事です。
僕はこの記事を読んで、SOFT SKILLSを読んでみようと思いました。

「厚切りジェイソン?年収2000万?なんかうさんくさいな~」というのがタイトルを見たときの第一印象だったのですが、読んでみるとSOFT SKILLSに通ずる考え方が載っていました。

プログラマのキャリア設計を見直す、というテーマでいうとこちらの「情熱プログラマー」もオススメです。
SOFT SKILLSよりも、もっと「ギーク寄り(=技術志向が強め)」な内容になっていて、こっちの本も僕は好きですね~。

おまけ:このブログをジョンさんにお知らせしたら「domo arigato」と返事が返ってきました!