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自由に再利用&改変可能(CC BY)なアンチハラスメントポリシーを作成しました #tokyogirlsrb

はじめに

2019年3月2日に開催されるTokyoGirls.rb Meetup vol.1の開催に向けて、TokyoGirls.rbでは独自のアンチハラスメントポリシーを作成しました。
このアンチハラスメントポリシーは、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際(CC BY 4.0)ライセンスで公開しているため、どのコミュニティでも自由に再利用および改変することができます。

このエントリではこのアンチハラスメントポリシーに関する詳しい情報を紹介します。

【もくじ】

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そもそも「アンチハラスメントポリシー」って何?

アンチハラスメントポリシーという言葉の意味を分解すると、以下のようになります。

  • アンチ=反〜、対〜の意味を表す接頭語
  • ハラスメント=いやがらせ
  • ポリシー=方針、考え方、行動原則

ですので、日本語に直訳すると「反いやがらせ方針」や「反いやがらせ原則」になるでしょうか。

ネットを調べてみましたが、そのまま「アンチハラスメントポリシー」とカタカナで書かれることが多く、明確な日本語訳は見当たりませんでした。

雑に意訳するなら「イベントに来た人たちが嫌な思いをしないようにするための共通ルール」みたいになるのかなー、と思います。

アンチハラスメントポリシーを策定する動機

TokyoGirls.rbは「女性も参加しやすい(でも女性限定ではない)Ruby勉強会」をコンセプトにしています。

イベントの趣旨をちゃんと理解してくれている人なら、あからさまなハラスメント(いやがらせ)をする人はおそらくいないと思うのですが、それでもたくさんの人が集まるので、絶対にトラブルが起きないとは言い切れません。

そこで予めルールや原則を参加者に周知しておくことで、トラブルを未然に防ぎ、このミートアップに申し込んでくれた人全員が安心して来場できるようにしたいと考え、アンチハラスメントポリシーを策定することにしました。

また、万一トラブルが発生した場合も、アンチハラスメントポリシーがあればそれを根拠にして、運営スタッフが自信をもってトラブルに対処できます。

このように、アンチハラスメントポリシーの策定はトラブルの予防と、トラブル発生時の被害を最小限に食い止めることが主な動機になっています。

で、どんなアンチハラスメントポリシーなの?

TokyoGirls.rbのアンチハラスメントポリシーは以下のURLで公開しています。

https://gist.github.com/JunichiIto/7a080f1cfb0ae27ef600c14b94a02db7

具体的な文面は以下のとおりです。

このアンチハラスメントポリシーの特徴

アンチハラスメントポリシーの文面はRubyKaigiやRuby25など、既存のアンチハラスメントポリシーを参考にさせてもらっています。
ですが、それらを全面的に拝借するのではなく、いくつか独自のアレンジを加えています。

見出しを付けて文書構造をわかりやすく

このアンチハラスメントポリシーには、「対象者」や「禁止行為」といった見出しを付けています。
こうすることで、最初から最後まで文章を目で追わなくとも、見出しだけに着目するだけで「このセクションで語られていることは何か」を把握できるはずです。
(コンピュータ用語でいうところの、シーケンシャルアクセスとランダムアクセスみたいな感じですね)

文章は極力簡潔に

アンチハラスメントポリシーはイベントの参加者全員が共通認識として理解しておくべきルールです。
なので、あれもこれも盛り込んだ重厚長大な文章にするのではなく、なるべくさっと読めて「なるほど、わかった」と思えるような文章の方が、「みんなに理解してもらう」という目的においては良いはずです。
そのために、このアンチハラスメントポリシーはなるべく簡潔な文章で書くことを心がけました。

あえて強い言葉を使わない

このアンチハラスメントポリシーでは、ポリシーに違反した場合の対処方法として「退場させます」「今後のイベントも出入り禁止にします」「場合によっては警察に通報します」等の強い言葉(強い警告)をあえて明記していません。

これは運営サイドが強権的な態度を見せれば見せるほど、「真面目な普通の参加者(=まったく問題を起こさない人たち)」が萎縮してしまうのではないかと考えたからです。

いくら強い言葉を使ったところで、無自覚な人による「うっかり事故」は起きてしまうときは起きてしまいますし、万一、本当に悪意を持った人が参加していたらどんな警告も無視すると思います。(もちろん、トラブルゼロで済むことが最善なのは言うまでもありません)

ただし、明記はしていないだけで、悪質なハラスメントが発生した場合は運営スタッフはしかるべきアクションを取ります。
その意思を示しているのが以下の2文です。

我々運営スタッフは、ハラスメントに直面している参加者の心理的、身体的な安全を、全力で確保するように努めます。

また、ハラスメント行為をやめるように要請された参加者は、運営スタッフの指示に直ちに従ってください。

「退場させます」「出入り禁止にします」「警察に通報します」といった具体的なアクションは、上の2文に含まれているものとお考えください。

自由に再利用と改変ができるライセンスにした

今回のTokyoGirls.rbの取り組みを見て、「よし、うちのコミュニティでもアンチハラスメントポリシーを作成するぞ!」と思っても、ゼロからアンチハラスメントポリシーを考えるのは結構大変です。
また、現実的にはゼロから文面を考える人よりも、既存のアンチハラスメントポリシーを参考にしながら作る人の方が多いはずです。(僕もそうでした)

そこで、これからアンチハラスメントポリシーを策定しようと考えている人たちのために、TokyoGirls.rbのアンチハラスメントポリシーは、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際(CC BY 4.0)ライセンスで公開することにしました。

Creative Commons — 表示 4.0 国際 — CC BY 4.0

CC BYは比較的制約の少ないライセンスで、

  • 商用利用も含めて再利用が可能
  • 改変も自由

になっています。

ですので、この文面をほぼそのままご自身のコミュニティのアンチハラスメントポリシーとして利用してもらっても良いですし、必要に応じて内容を削ったり追加したりしても構いません。

ただし、再利用する場合は、

このアンチハラスメントポリシーは、CC-BY-4.0で公開されている「TokyoGirls.rb アンチハラスメントポリシー」を元に作成しています。

のようなクレジットを明記するようにお願いします。(これはCC BYに定義されている利用条件です)

アンチハラスメントポリシーがあって困る場面は少ない、いや、むしろあった方がみんな安心してイベントに参加できると思うので、これを機にいろんなコミュニティで積極的に採用されていってほしいなと僕は考えています。

まとめ:冷たい鎖ではなく、温かい日差しとしてのアンチハラスメントポリシー

というわけで、このエントリではTokyoGirls.rbで策定したアンチハラスメントポリシーを紹介しました。

こういったルールを作ると、「これはいいの?ダメなの?」「こんなときはどうなの?」みたいな個々の事象に関する疑問が出てくるかもしれません。
しかし、僕としては「あれはダメ、これはOK」と細かいルールをいちいち増やしたくありません。
禁止事項を増やしていくとキリがないですし、そうなっていくと「ルールに書いてないんだから、別にいいじゃん」と子どもみたいなことを言う人が出てきかねません。

そうではなく、もっとメタな視点で、

  • 隣にいる参加者が笑顔で帰るためにはどう行動したらいいか?
  • 「次もあの人が来るんだったら、もう自分は参加しないでおこうかな」と相手を悲しい気持ちにさせないためにはどうしたらいいか?

ということを考えてみてほしいです。

そんなふうに相手の立場や気持ちをちょっとだけ想像できれば、細かくルールを定めなくとも、自ずと自分が取るべき行動が見えてくるはずです。

このアンチハラスメントポリシーが「参加者のみなさんの自由を奪う冷たい鎖」ではなく、「思いやりの気持ちを芽生えさせる温かい日差し」になってくれれば嬉しいです。

このポリシーの「さいごに」で書いた文章には、その思いが込められています。

当ポリシーは禁止事項を増やして、みなさんの自由を制限するために策定されたわけではありません。

私たちは運営スタッフは次のような思いで当ポリシーを策定しました。

  • 参加者のみなさんが笑顔で帰ってほしい
  • 不安な気持ちやモヤモヤした感情を抱えることなく、素直に「また来たい」と思ってほしい

わざわざ厳格なルールを定めなくとも、参加者ひとりひとりが「ちょっとだけ、相手の立場や気持ちを想像してみること」を心がければ、上記の願いは容易に叶えられるはずです。

誰もが気軽に参加しやすいイベントを維持するために、みなさんのご理解とご協力をよろしくお願いします。
 

TokyoGirls.rb アンチハラスメントポリシー · GitHub

参考文献

TokyoGirls.rbのアンチハラスメントポリシーは、以下のアンチハラスメントポリシーやガイドラインを参考にして策定しました。

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2019年3月2日に開催されるTokyoGirls.rb Meetup vol.1の詳細については、こちらのエントリをご覧ください。
blog.jnito.com