はじめに
昨日、西脇税務署に妻の店の確定申告を出してきました。
確定申告の受付期間は昨日から開始で、税務署は混んでたりするのかな〜と思ったのですが、まったくガラガラでした。
まあ、初日の朝一番から気合いを入れて出す人なんてそういないですよね〜。
受付のおじさんに書類を提出して、控えの書類に受領印を押してもらって、あっさりと平成24年度の確定申告が終わりました。
初年度の決算はあまり実感の無い「赤字」
それでは平成24年度の会計収支報告です・・・って、公開企業じゃないので細かく書きませんが、一言で言うと「赤字」でした。
でも粗利は十分出ているので、「赤字」と言っても心境的には「儲かってない」という感じはしません。
むしろ週2日だけの営業にしては十分奮闘している数字だと思います。
粗利は出ているのに、なぜ赤字になるのかというと、減価償却費が大きいからです。
開店時の建物やオーブン等に対する出費が大きいので、減価償却費を入れると粗利を食いつぶしてしまいます。
ただ、開店時の出費や装置機械につぎ込んだお金って、「夢を手に入れるために自らすすんで買ったもの」みたいな印象なので、心理的には開店時はゼロからの出発なんですよね。マイナスではなくて。
借入金もほとんどないので、普通に営業していると「最初につぎこんだあのお金を何とかして回収せねば・・・!!」というような焦りはほとんど感じません。
もちろん、そうはいっても一応商売なので赤字経営を続けているのは何の意味もないわけです。
とはいえ、この調子であと4〜5年続けたら、減価償却費も下がってきてそのうち黒字転換するんじゃないかな〜と予想しています。
当然、4〜5年続けてもらうのは妻です。
僕は気楽に「がんばれよ〜」と脇から応援するだけです(笑)。
経理業務を一年やってわかったこと
さて、ここからは僕が妻の店の経理業務を一年やってわかったことをまとめてみたいと思います。
僕と同じように個人事業主一年目の方には多少参考になるかもしれません。
長いので先に見出しだけを載せておきます。
- とりあえず無難に青色申告を選択
- 簿記の資格を持ってて良かった
- 税理士に頼らなくても自分でなんとかなった
- 黒字じゃないと控除は無意味
- 赤字だと所得税がゼロ
- 赤字になったら損失申告用の第四表を忘れずに提出する
- 10万以上30万円未満の物品は一括償却 or 即時償却
- 青色申告ソフトは買った方がいい
- 青色申告ソフトのサポートパックも付けた方がいい
- 青色申告ソフトを購入すると初年度は2年分のコストがかかる
- 青色申告ソフトではe-Taxで確定申告できない
- 書類を提出する前にもう一度仕訳データを見直そう
それでは以下に詳細を書いていきます。
とりあえず無難に青色申告を選択
個人事業主は白色申告と青色申告が選べますが、妻の店では青色申告を選びました。
一部では「実は白色の方がいい」というような意見もあるようですが、やはり青色申告は控除等の特典も多いですし、僕自身が簿記の資格を持っていたこともあって、「どうせなら青色でやろう」と青色申告を選びました。
簿記の資格を持ってて良かった
僕は日商簿記の2級と3級に合格しています。
当時は単に「SEに必要な業務知識のひとつ」として勉強していたのですが、この知識が妻の店の経理業務をするのに思いかけず大活躍しています。
妻の店のような小さなパン屋さんの経理業務は簿記3級の世界そのものです。
というか、売掛金や手形、小切手といった用語は登場しないので、必要になる知識は簿記3級よりもさらに少ないです。
日々の仕訳や決算業務をするときにはある程度簿記の知識を土台にして、「この場面ではどうすべきか」ということを考えられるので、非常に心強いです。
人生どこで何が役に立つのか分からないもんですよね〜。
税理士に頼らなくても自分でなんとかなった
店を始める前は自分一人で店の経理をやっていけるのか非常に不安でしたが、なんとか一年乗り切りました。
前述の簿記の知識に加え、以下で挙げている2冊の本を何度も読んで、必要な手続きや節税のテクニックを勉強しました。

らくらく個人事業開業のすべてがわかる本―記入例付だから1人でできる!
- 作者: 東京シティ税理士事務所,山端康幸,草刈章雄
- 出版社/メーカー: あさ出版
- 発売日: 2005/03/26
- メディア: 単行本
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フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。
- 作者: きたみりゅうじ
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2005/12/08
- メディア: 単行本
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上の本は正統派の解説本です。
必要な作業や手続きをかなり具体的に説明してくれるので、経理業務をする際に自分のケースに当てはめながら、実践的な知識を得ることができました。
一方で下の本は打って変わってちょっとグレーな(??)解説本です。
というか、「税務調査怖い」「いつ何されるのかわからへん」というビクビク感を取り除いてくれたという意味で、非常に有益な本でした。
また、「脱税」と「節税」の境目をちゃんと解説してくれている点も非常に良かったです。
前者はマジメで役に立つ本、後者は面白くて役に立つ本で、どちらも個人事業主一年目の方にはオススメです。
あと頼りになったのはやっぱり「グーグル先生」ですね。
たいていの仕訳パターンはYahoo!知恵袋とかOK Waveとかに載っているので、それを参考にすれば仕訳ができます。
ちなみに、検索内容によっては参照したページによって意見が異なっている場合もあり、明確なルールが存在しない仕訳もあるんだろうな〜と思いました。
黒字じゃないと控除は無意味
上で挙げたような本を読んでいると「青色申告するとこんな控除が付いてきます!」と、たくさん控除の説明が載っています。
それを読んで「青色申告 → 控除ができる → 節税効果バツグン」だと僕は期待していたのですが、控除が効くのってあくまで黒字の時だけなんですね・・・。
赤字だと控除をしようにも、「控除が差し引かれる利益がゼロ」なので何もできないわけです。
まあ、よくよく考えると当たり前なんですが、よく考えていなかった頃の僕は「青色申告、すなわちオトク」の印象しかありませんでした。お恥ずかしい。。。
赤字だと所得税がゼロ
赤字を喜ぶのはおかしな話ですが、赤字だと所得税がゼロになるのもビックリしました。
所得税の計算は基本的に「収益 × 税率」なので、収益(売上や粗利ではない)がゼロだと「0 × 税率 = 0」になるんですね〜。
てっきり所得税には「基本料金」的な税額が存在してるんだろうと思っていました。
僕が読んだ本はたいてい黒字決算が前提だったので、こういう赤字決算のときの考え方は意外な盲点だと思いました。
赤字になったら損失申告用の第四表を忘れずに提出する
上で紹介した「フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。」という本にも載っていますが、青色申告をすると赤字を3年間繰り越せます。
ただ、繰り越せるらしいのですが、将来黒字になったらどのように過去の赤字額を控除額として組み込めるかはよくわかってないので、ここでは詳細は書きません(書けません)。
一つだけ言えることは、赤字になったら損失申告用の第四表を忘れずに提出しましょう、ということです。
そうしないと赤字を繰り越せません。
ちなみにこの第四表、ネットや本では記入例があまり見つからないので、記入にちょっと苦労しました。
とりあえず国税庁の公式ページにあったサンプルを参考にしました。
10万以上30万円未満の物品は一括償却 or 即時償却
10万円以上の物品を購入すると基本的に償却資産となるのですが、減価償却のやり方もいろいろあります。
10万以上20万未満であれば一括償却資産となり、3等分した額を1年ずつ減価償却費として計上し、3年で償却できます。
また、固定資産税の課税対象外になるといううれしいオマケも付いてきます。
20万以上30万未満であれば即時償却資産となり、その年に全額をまとめて減価償却費として計上できます。
ただし、この場合は固定資産税の課税対象になります。
まあ、簡単にまとめるとこんな感じなのですが、厳密に言うともっと細かい制約がいろいろあったり、法律が年度によってコロコロ変わったりするので、詳しくはネットの最新情報等を調べてみてください。
とりあえず僕は「一括償却」や「即時償却」といった区別の付きにくい名前や、一方は固定資産税の対象でもう一方は対象ではない、といったルールが複雑すぎて、このあたりを理解するのに苦労しました。
青色申告ソフトは買った方がいい
最初はできるだけ出費をしたくなかったので、ネットで見つけたフリーのExcel製の青色申告ソフトで帳簿を付けていました。
が、入力するたびに自動計算が走り、みるみるうちに重くなっていったので、結局青色申告ソフトに移行しました。
僕は現在このソフトを使っています。

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まあ「いかにも〜」な青色申告ソフトなんですが、Mac向けの青色申告ソフトってあまり選択肢がないんですよね〜。
もうちょっとMacらしいクールでオシャレな会計ソフトがあるといいんですが。
Amazonのレビューなどを見てると散々なことを書かれていたりしますが、使ってみるとそんなに悪いソフトではなかったです。
注文を付けたくなるところも多々ありましたけど。
基本的に仕訳データさえ入れていけば、あとは自動で損益計算書や貸借対照表の計算をしてくれて、提出用の書類もコピー用紙に印刷できるというのは、やはり大きなメリットです。
ミスがあっても確定申告の直前まで何度でもやり直しができます。
手作業で計算すると日が暮れそうですし、Excelで計算式を組むのもおそらく至難の業になると思います。
そんなわけで青色申告ソフトは必須です。
青色申告ソフトのサポートパックも付けた方がいい
簿記の資格は持っているので「サポートなしでもいけるかな」と思いましたが、やはり最初はサポートパックを付けることにしました。
実際、サポートパックは付けて正解でした。
実際、帳簿を付けていくとするとかなりの頻度で「あれ?これどうするの??」という場面に遭遇します。
仕訳の仕方そのものはネット等で見つかるのですが、ちょっと変わった仕訳や償却資産になると「ソフトへの入力方法自体が説明書を読んでもよく分からない」という問題が発生します。
というわけで僕は結構頻繁にサポートセンターへメールを投げていました。
平日であれば半日ぐらいで回答が返ってきたので、サポートセンターの対応には満足しています。
青色申告ソフトを購入すると初年度は2年分のコストがかかる
青色申告ソフトは毎年12月から1月頃にバージョンアップします。
これは機能的なバージョンアップというよりも、最新の法律や書式に対応するためのアップデートである側面が強いです。
なので、結局毎年バージョンアップした方が無難です。
1年に一回の出費ならまだ許せるのですが、初年度は2年分の出費が必要になります。
なぜなら会計期間中に仕訳データを入力するために会計ソフトを購入し、その後、年末年始頃に確定申告の書類を作成するために会計ソフトをバージョンアップしなければいけないからです。
バージョンアップしないと、前年度の法律や書式で確定申告することになってしまいます。
僕はてっきり最初に買ったバージョンでそのまま確定申告が出せると思っていたので、ちょっとダマされた気分になりました。。。
まあ、商売の一部なんで多少の出費なら必要経費と見なせばいいんですけど。
青色申告ソフトではe-Taxで確定申告できない
他の会計ソフトのことはよく知りませんが、僕の購入した「やるぞ!青色申告」にはe-Taxとの連携機能は無いそうです。
IT業界に携わる人間の一人として、e-Taxの使用レポートも書いてやろうかと思ったのですが、紙に印刷して税務署に出す方がはるかに手軽そうだったので、e-Taxはヤメました。
まあ、青色申告ソフトを使えば「印刷して、提出したら終わり」の状態まで持っていってくれるので、わざわざe-Taxを経由するメリットはほとんどないんですけどね。
ちなみに実は5年ぐらい前に僕が会社員としてe-Taxを使って確定申告したことがあるのですが、あのときの印象は最悪でした。
ICカードを利用するまでの手続きが面倒だし、申告用のソフトは使いづらいし、ネットなのに夜間や早朝は申告を受け付けないし、あっちこっちでイライラさせられた記憶があります。
あのときから現在はどう変わったのか、ちょっとだけ興味があります。
書類を提出する前にもう一度仕訳データを見直そう
青色申告ソフトを使うと自動で決算書用のデータを計算してくれます。
なので、ついつい「機械は間違うはずがない」と思いがちです。
ですが、そこに大きな落とし穴があったりします。
機械が間違えないことは確かなのですが、人間が間違うこと、すなわち入力ミスをしている可能性があるのです。
貸借対照表を見ると預金の額が通帳の額と合わないので、原因の調査をしていました。
すると、ところどころで入力が漏れていたり、ゼロの数が一つ多かったりする入力ミスを発見しました。
これをきっかけに仕訳データを一年分ざっと見ていったところ、やはりポツポツと怪しい入力値が見つかりました。
なので、決算を確定させる前に仕訳データを金額でソートして不自然に大きい仕入額がないか探したり、項目でソートして通常あり得ない組み合わせで仕訳データを作ったりしていないか、一度調査してみるといいと思います。
まとめ
というわけで、今回は妻の店の経理業務に関連する話をあれこれしてみました。
仕訳データの入力や決算処理は面倒なことも多いですが、一方で「商売ってこんな風に回っていくんだね〜」という勉強になります。
会社勤めをやっているとほとんど縁の無い世界だと思うので、なかなか面白い経験だと感じています。
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Excelの青色申告データを「やるぞ!青色申告」にインポートするという、非常にニッチな技術を取りあえげたエントリです(苦笑)。

- 作者: ロバートキヨサキ,シャロン・レクター(公認会計士),白根美保子
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