はじめに
ちょっと前にTwitterのTLを見てたら、こんなツイートが目に入りました。
退職する人間の有給ぐらい、取らせたところで会社に損害なんてないようにおもうんだけどなぁ(´・ω・`)
— Takafumi Yoshida (@zephiransas) July 24, 2013
退職時の有給交渉は、たぶん直属の上司よりももっと上の人とやればよかったんだろうなー、と思う。恨みつらみ言われてほんとに消耗したもん。
— だいくしー(超高校級のプロ・グラマー) (@daiksy) July 24, 2013
ああ、確かに。
なんかよくわかんないけど、退職するときに有給使おうとすると露骨に嫌がられる会社って多いですよね~。
去年僕が前の会社を辞めるときもそうでした。
でも僕の場合、何とか有給を使って辞めることができました。
しかも上司とはケンカにならずにです。
今回はそのときのエピソードをちょっと書いてみたいと思います。
「会社を辞めるときは円満退社が一番ですよ」
有給を使って辞めるのはNG、っていうのは当時の部長さんのポリシーでした。
僕が辞めるちょっと前に退職した同僚がいるのですが、彼はその部長とかなりバトって有給をムリヤリ使ったらしい、という話を聞いてました。
案の定、僕が直属の上司に退職の話を切り出した際も「有給を使って辞めたいなら、部長と直接交渉してきて」と言われました。
さて、どうやって交渉しましょう?
「有給を使って辞めちゃダメ」って上の人から言われたら、いっぱい言いたいことが出てきますよね~。
「それじゃあ何のための有給やねん!!」
「有給は法律で保証された従業員の権利だ!!」
「有給を使って何が悪い!!労働基準監督署にチクるぞ、コノヤロー!!」
などなど。。。
ええ、ええ、気持ちはわかります。
僕もそう言ってムリヤリ有給を使いたくなりました。
が、そんなアプローチでは確実にケンカ別れになってしまいます。
転職先の社長さん(=@kuranuki)からは「会社を辞めるときは円満退社が一番ですよ」と言われていたこともあり、できるだけ穏便に事を済ませたいという気持ちがありました。
まず相手の言い分を聞く
というわけで、荒ぶる気持ちはぐっと抑えて、部長さんにはまず「なぜ有給を使って辞めてはいけないのか」を尋ねました。
すると部長さんいわく、「有給は職場で働いている人が使うもの」なんだそうです。
もう少し掘り下げると、「仕事 → 有給 → 仕事」というように仕事で有給をサンドイッチするならOKであるものの、「仕事 → 有給 → 退職」では仕事でサンドイッチされないのでNGなんだそうです。
さて、これを聞いて「A-ha!なるほど!!」と納得した人はどれくらいいるでしょうか??
正直言って僕は「もやっと」しました。
そんな理屈は生まれて初めて聞きました。
でもまあ、そこで「はぁ?そんな理屈はおかしいやろ!?」と切り返すとケンカが勃発します。
なので、「へ~、なるほど、そういう考えがおありだったんですね」と軽く相槌を打つ程度にとどめました。
その後も部長さんは「僕が若い頃はみんなそういう風に有給を使っていた」とか、「最近はみんな有給を使って辞めようとするから困る」といった話をされていました。
こういう部長さんの話にはツッコミどころがいろいろありそうが、その場で部長さんにツッコミを入れるのはNGです。
僕は「なるほど」「そうだったんですね」と聞き役に徹しました。
「対立」ではなく「協調」の空気を作る
それから、有給の話だけではなくて「僕たちにはあまり見えてこないですけど、部長としていろいろ大変な思いをされてるんじゃないですか?」と普段の仕事についても尋ねてみました。
そうすると部長さんは色々と普段思っていることや苦労されていることを僕に話してくれました(細かい話は失念してしまいましたが)。
そんな話を聞いたりしているうちに、部長さんが苦笑いしながら、ぼそっと
「まあ別に有給を使って辞めてもいいんだけどね」
と独り言のようにつぶやきました。
部長さんが心の中で「僕もそこまで意地を張るのはしんどいんだよ」と言っているようにも聞こえました。
部長さんの方からそんな言葉が出てくるのはちょっと意外でした。
でも、「対立」ではなく「協調」の空気の中で話し合いをすると、がんばって意地を張るテンションもだんだん落ちてくるんだと思います。きっと。
最後に、相手の美しい心情に訴える
なんにせよ、僕にとってはチャンスです。
部長さんはもともとそんな冷徹な人間ではないので、話せばわかる部分もあると思い、こんな話をしてみました。
「なんだかんだで、僕も意外と忙しくこの会社で働いてきました。
ちょっと仕事に余裕ができたら長い有給を取って家族と旅行にでも行こうと考えていましたが、そんな余裕もなかなかできず、もう何年も同じペースで働いています。
ここで長い休みを取り逃したら次はいつ取れるかわかりません。
ここまで我慢してついてきてくれた妻や子どもたちと良い思い出を作りたいんです。
もちろん、今受け持っている仕事は責任を持ってきちんと終わらせますし、引き継ぎもしっかりやります。
だから、退社前の二週間だけ、有給を取らせてもらえないでしょうか?」
すると部長さんはさっきと同じ苦笑いをしながら「・・・いいですよ」と言ってくれました。
よっしゃーーーーーーーー!!!!!
交渉成功っ!!!!!!
と、心の中でガッツポーズをしながら、部長さんに「どうもありがとうございます!」と笑顔で返事をしました。
余談: 万一のトラブルにも備えましょう
ちなみに、あとから「言った、言わなかった」の問題が起きないよう、交渉の一部始終はiPhoneのボイスメモで こっそり録音 しておきました。(ニヤリ)
「人を動かす」を読んで、人を動かす
僕のこういう交渉のアプローチは、実は「人を動かす」という本の内容を実践したものです。
- 作者: デールカーネギー,Dale Carnegie,山口博
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 1999/10/31
- メディア: 単行本
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この本には人間関係を改善させるいろいろな行動指針が載っています。
僕が有給の交渉で参考にした行動指針を挙げるとこんな感じになります。
- 批判、非難、苦情を言わない。
- 人の立場に立つ。
- 聞き手にまわる。
- 議論を避ける。
- おだやかに話す。
- 相手にしゃべらせる。
- 人の身になる。
- 同情を持つ。
- 美しい心情に呼びかける。
たぶんこの本を読んでいなかったら、僕も真正面から噛みついてケンカ別れすることになっていたと思います。
なお、「人を動かす」についてはちょっと前のエントリでも詳しく紹介しているので、そちらも参考にしてみてください。
まとめ
もちろん、コンテキストは人それぞれだと思うので、すべてのケースで僕のようなアプローチが成功するとは限りません。
しかし、有給の取得に難色を示す相手に正論を我が物顔で振りかざすと、有給はなんとか取得できるかもしれませんが、多くの場合はケンカ別れになってしまいます。
「退職前に有給を取得できることは絶対に正しい」と自分が思っているように、相手も「退職前に有給を取るなんて絶対におかしい」と思っています。
人間はたいていの場合、自分は正当であると信じ切って行動しているので、真正面からぶつかると平行線の議論が永遠に続きます。
なので、心の中では「なんだって!?コノヤロー!!」と思うことがあっても、その気持ちをぐっと抑えて穏やかな態度で相手に接しましょう。
そうした方がきっと、自分が望む結果をスムーズに得られるはずです。
近々退職を考えていて、「さあ、有給を勝ち取るために上司と対決だ!!」と鼻息を荒くしている人がいたら、今回の僕のエピソードもぜひ参考にしてみて下さい。
P.S.
ちなみにこの部長さんは僕が退職した数ヶ月後に、個人的な事情で退職されたそうです。
なのでそろそろ時効にできるかな~と思い、今回このエピソードを紹介してみることにしました。
P.S. その2
最初に転職したときは有給を全く使わず、退職日の翌日が新しい会社の初出社日でした。
「どうしてもこのプロジェクトだけはこの日までに終わらせて!!」という期日と、「どうしてもこの日から出社して!!」という日にちが隣り合わせだったんで、有給が使えませんでした。
でもまあ、僕としてもそのプロジェクトはきっちり終わらせてから次の会社に行きたかったので、このときは特に後悔はしてないですね。