はじめに
3年前の今日、2017年11月25日に僕が執筆したRubyの入門書「プロを目指す人のためのRuby入門」(通称チェリー本)が発売されました。
つまり、今日でチェリー本が発売されて3年になります!(拍手〜!👏👏👏)
プロを目指す人のためのRuby入門 言語仕様からテスト駆動開発・デバッグ技法まで Software Design plus
- 作者:伊藤 淳一
- 発売日: 2017/11/25
- メディア: Kindle版
ありがたいことにチェリー本は自分でも予想できなかったぐらい、たくさんの人に読んでもらえました。
すでに増刷も4回行われています。購入してくださったみなさん、本当にありがとうございます!😆
概して技術書は賞味期限が短く、3年も経つと内容が古くなって使い物にならなくなることもよくあります。
ですが、チェリー本はRubyの本質的な部分にフォーカスしているので、大半の内容は2020年現在でも有効です。
もちろん、一部は執筆当時と仕様が変わってしまった部分もありますが、そういった差異についてはネット記事でフォローしています。
- Ruby 2.5で発生する「プロを目指す人のためのRuby入門」との差異について - Qiita
- Ruby 2.6で発生する「プロを目指す人のためのRuby入門」との差異について - Qiita
- Ruby 2.7で発生する「プロを目指す人のためのRuby入門」との差異について - Qiita
今年の12月25日にリリースされるRuby 3.0についても、同じように本書との差異を解説する予定ですので、これから読もうと思っている方も安心して購入してください!
本題:技術書の商業出版と同人誌、どっちが儲かるの問題 について
さてさて、発売3周年を記念して、何かチェリー本に関する話題をブログに書いてみようかな〜と思ったのですが、差し障りのない話よりも、ちょっと刺激的な話題の方が面白いかな?と思って、今回はお金にまつわる話を書いてみようと思います。
テーマはずばり「技術書の商業出版と同人誌、どっちが儲かるの問題について」です!
前述の通り、僕は技術評論社から「プロを目指す人のためのRuby入門」という技術書を商業出版しました。
一方、僕は「Everyday Rails - RSpecによるRailsテスト入門」という電子書籍も翻訳して販売しています。
こちらはLeanpubという海外の自費出版サイトでしか購入できない電子書籍です。
本屋さんやAmazonでは購入できないので、商業出版ではありません。
この本を「同人誌」と呼ぶのは自分でも少し違和感がありますが、「商業出版ではない電子書籍オンリーの自費出版本」という販売形態は、いわゆる「同人誌」とあまり変わらないと思うので、ここでは同人誌扱いとさせてください。
というわけで、僕は商業出版と同人誌を1冊ずつ出版したことになります。
では、どちらの方が儲かっているのでしょうか?
今回はそれを大公開!!・・・したいのですが、公表できる数字とできない数字があるので、具体的な金額は言えません。(ごめんなさい)
その代わりに可能な範囲でそれぞれの情報を書いてみようと思います。
数字で見るチェリー本とEveryday Railsの比較
「プロを目指す人のためのRuby入門」(商業出版)
- 発売日
- 2017年11月25日
- 販売価格
- 2980円 + 税
- 印税率
- 具体的には書けませんが、ネットでよく見かける印税率と大差ありません
- 販売部数
- 具体的には書けませんが、「技術書としては大ヒット」と呼んでいいぐらいの販売部数はあるようです
「Everyday Rails - RSpecによるRailsテスト入門」(同人誌)
- 発売日(日本語版の発売日)
- 2014年2月7日
- 販売価格
- 19ドル=約1980円以上(Leanpubでは購入者が購入価格を自由に上乗せできます)
- 印税率
- 販売価格の80% (ただし、原著者と翻訳者の配分率は非公開)
- 販売部数
- 4860部(2020年11月25日現在。部数は読者数として販売サイトに表示されている)
はい、参考になるような、ならないような、どっちかというと参考にならない数字かもしれませんね(苦笑)。
単純な話、収入を計算する上で重要なパラメータは印税率と販売部数です。
なぜなら販売価格 x 印税率 x 販売部数で僕の懐に入ってくる金額は決まるからです。
とはいえ、どっちもボカしてあるので正確な数字は僕にしかわかりません🤣
印税率の高いEveryday Rails vs 販売部数の多いチェリー本
印税率だけにフォーカスして両者を比較すると、Everyday Railsの方がずっと印税率は良いです。
「原著者と翻訳者の配分率は非公開」としていますが、僕が得られる正味の印税率を見ても、チェリー本よりも印税率は上です。
そのため、1冊あたりの収入額はEveryday Railsの方がチェリー本よりも多くなります。
その一方で販売部数も重要なパラメータになります。
Everyday Railsとチェリー本、どっちの方がたくさん売れてるのかというと、これはチェリー本の方です。
Everyday Railsは発売から6年以上経っていますが、販売部数だけでいうと、チェリー本の方があっという間にEveryday Railsの販売部数を抜き去りました。
ですので、印税率が低いからといって、「同人誌の方が商業出版よりも儲かる」とは言い切れないところがミソです。
で、結局どっちが儲かるの?
僕もここでいいかげんなことは書けないので、過去の伝票を引っ張り出して双方の収入額を合算してみました。
販売期間が異なるので、なるべく条件を揃えるために、ここでは以下の計算式で「1年あたりの平均収入額」を比較してみることにします。
これまでの総収入額 ÷ 販売年数 (Everyday Railsは6年、チェリー本は3年)
この計算式で比較してみると、1年あたりの平均収入額が多かったのは・・・「プロを目指す人のためのRuby入門」の方でした!!
そうなんです。僕の場合、同人誌よりも商業出版の方が儲かってるんです。
比率で言うと、チェリー本の方が1.6倍程度平均収入額が多かったです。
ちなみに「これまでの総収入額」だけで比較すると、Everyday Railsの方が上になります。
ただし、チェリー本との差は1.2倍程度です。
また、Everyday Railsは毎月売上が報告されますが、チェリー本は半年に1回です。
もしかすると、チェリー本の次回の売上報告が出たら、総収入額もチェリー本がEveryday Railsを上回るかもしれません。
なお、具体的な額は書けませんが、Everyday Railsの総収入額とチェリー本の総収入額を合算したら、軽く1千万円を超えていた、とだけ書いておきます。
商業出版のいいところ
他にも、同人誌と商業出版をどちらも体験した人間としては、商業出版には以下のようなメリットがあるな〜と感じています。
- 書店の本棚に並んだり、Amazonでリコメンドされたりする宣伝効果はめちゃくちゃ大きい(なので、よく売れる)
- 「もっと印税率が高ければ」と考えることはよくあるが、自分で在庫を抱えなくてよい、全国の書店に本を置いてもらえる、自分で本を発送したりする手間もない、大コケしても借金を抱えるリスクはない、といった利点を考えると、「まあそんなもんかなー」とも思う(売上全額あげる代わりに全部1人でやれと言われたらとても無理)
- 「( Everyday Railsではなく)チェリー本を読んで伊藤さんを知りました」という声の方が圧倒的に多いので、僕自身の知名度アップにもかなり貢献してそう
あくまで「うまく波に乗れば(よく売れれば)」という条件付きにはなると思いますが、僕個人としては「商業出版も悪くないな。むしろよい経験ができたな」と感じています。
まとめ
というわけで今回は「プロを目指す人のためのRuby入門」の発売3周年を記念して、「技術書の商業出版と同人誌、どっちが儲かるの問題」を語ってみました。
チェリー本を出版するまでは正直言って「印税率も低いし、たぶんEveryday Railsの方が儲かるんだろうな」と思ってたんですが、蓋を開けてみるとビックリ、チェリー本が印税率の少なさを帳消しにする勢いで売れてくれました。
なので、今は「商業出版、意外と儲かるやん!」という気持ちです。
とはいえ、これはあくまで僕個人の一事例に過ぎません。
n = 1で一般化できるとは僕も考えていないので、あくまで参考情報として考えてください。
ただ、世の中的には「商業出版は儲からない。同人誌の方が儲かる」という言説を見かけることの方が多い気がします。
ですが、うまく波に乗れば、商業出版でも十分いい収入を得られるケースがある、ということを多くの人に知ってもらえたら嬉しいです😄
PR:チェリー本とEveryday Rails、どちらも好評発売中です!!
これからRubyを学びたい人や、RSpecを使ってRailsのテストコードを書けるようになりたい人は、ぜひチェリー本とEveryday Railsを手に取ってみてください。
内容については著者・翻訳者である僕が、自信をもってお勧めします!
今後もチェリー本とEveryday Railsをよろしくお願いします😆
プロを目指す人のためのRuby入門 言語仕様からテスト駆動開発・デバッグ技法まで Software Design plus
- 作者:伊藤 淳一
- 発売日: 2017/11/25
- メディア: Kindle版